研究課題/領域番号 |
20K05243
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
木島 龍朗 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (50272084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 4級アンモニウムイオン / Bola型界面活性剤 / 粘性液体 / 会合挙動 / レオロジー特性 / 棒状ミセル構造 / 非ニュートン流体 |
研究実績の概要 |
計画した合成ルートに従って、11-bromoundecanoic acidを出発原料に、6ステップで目的化合物である1,1'-ferrocene-bis-(undecyl ammonium bromide)を全収率7%で合成することに成功した。得られた化合物(Bola-1)は、表面張力,動的光散乱,走査型電子顕微鏡等による分析結果から、水中で分子集合体を形成することが示唆され、更にグルコース透析法を用いた水溶性物質の保持率から内水相を有するベシクルであることが確認された。しかし、このBola-1に対して有機塩であるサリチル酸ナトリウムを添加しても、溶液粘性を確認することはできなかった。 そこで粘性発現の鍵は4級アンモニウムイオンの構造にあると考え、類縁化合物である1,1'-ferrocene-bis-(trimethyl ammonium bromide)を全収率36%で合成した。得られた新規なBola-2は、Bola-1と同様に表面張力,動的光散乱,走査型電子顕微鏡等による分析から、水溶液中ではベシクル構造を持つ分子集合体であることが示唆された。更に水溶液中にて有機塩であるサリチル酸ナトリウムを添加することで溶液粘性を示すことが確認された。そこで、得られた粘性流体のレオロジー特性をレオメーターを用いて角周波数依存性およびせん断速度依存性を調べたところ、この粘性溶液は粘性支配的であり、ひも状ミセルを形成しにくい非ニュートン流体であると考えられた。また小角Ⅹ線散乱測定の結果、Guinier解析からBola-2は溶液中で集合体を形成していると考えられ、Kratky plotから、ひも状ミセルまでは大きな構造を形成せず、棒状に近い集合体を形成していることが考えられた。今後は、電気化学的な刺激による会合体の崩壊-再形成,溶液粘性と会合体構造との関係について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた化合物(Bola-1)は、合成には成功したものの、有機塩であるサリチル酸ナトリウムを添加しても、予想した溶液粘性を確認することはできなかった。しかし、類縁構造体である化合物(Bola-2)を合成し、同じ有機塩であるサリチル酸ナトリウムを添加することで、溶液粘性を確認することができた。現在は、Bola-2のキャラクタリゼーションとして、会合挙動および電気化学的な刺激による会合体の崩壊-再形成,有機塩の添加による溶液粘性と会合体構造との関係について詳細に調査している。
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今後の研究の推進方策 |
予定通りに目的化合物(Bola-2)の合成に成功し、予想した溶液粘性の確認まで終えたので、今後は実施計画に沿って、会合体の形成と電気化学的な刺激による会合体の崩壊-再形成評価を進める。さらに、得られた会合体を用いた徐放性・放出性の評価も進めていく。 また当初予定していた化合物(Bola-1)では、有機塩であるサリチル酸ナトリウムを添加しても、溶液粘性を確認することはできなかったが、その原因解明を進める。これにより、イオン構造と有機塩による粘性発現の関係について明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、予定していた学会や出張がすべてオンラインになり、旅費による支出がなかったため。今回の事態で生じた助成金分は、次年度開催の学会旅費不足分への充当および消耗品への充当を考えている。
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