研究課題/領域番号 |
20K05342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 武則 東京大学, 低温科学研究センター, 助教 (80361666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トランスバース型熱電素子 / 電気二重層トランジスタ / カーボンナノチューブ / 熱電変換素子 / ambipolarトランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電気二重層トランジスタ(EDLT)の手法を用いて、新しいコンセプトの熱電変換素子を作製することである。 トランスバース型熱電変換素子は、p型とn型の熱電材料を直列に接合し、接合部にヒートガイドを付けることで縦方向の温度差を横方向に変換する構造となっており、薄膜や、素子の微細加工に適している。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、100nm程度のシートなので、このような素子構造で集積させることによって実用的な電力を取り出せると考えられる。近年、電解液を用いてambipolarトランジスタ構造を作製する方法が報告された。本年度は、SWCNTを用いてトランスバース型熱電素子を作製するために、直線状のSWCNTシートに正極と負極を交互に付け、ゲート電極との間に電圧を印加することによって直列のp-n接合を作製することに試みた。まず、熱電特性の評価を行うとともに、p-n接合を作製するための条件を最適化するために、1対のp-n接合を作製した。SWCNTシートの両端にSourceとDrain端子を付け、シートの中央に熱を流し込むための電極とヒーターを取り付けた。熱流は、中央の端子からSourceとDrain端子に向けて流れる。2つの熱電対で中央の端子とSource, Drain両端子間の温度を測定し、その熱起電力を観測したところ、SourceとDrain端子に逆電圧を加えた時に、正と負の熱起電力を示した。このことから、p-n接合が作製できたことがわかる。その起電力は、キャリア濃度の勾配により小さくなっているが、SWCNTの熱起電力から予測される、キャリア濃度の勾配を考慮した理論計算から求めた熱起電力とよく一致していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、熱電素子の性能を評価するための装置作製を主に行った。ペルチェ素子を用いて、0から100度程度の温度範囲で熱電素子の性能を評価する装置の作製を行った。これにより、昨年度明らかにした、高温で硬化する電解液の制御が可能となるが、実際の動作はまだ確認できていない。今後PIDの調整等、装置の改良が必要である。 それと同時に、トランスバース型熱電素子の作製を行い、電解液を用いたゲート制御によってSWCNTのp-n接合を作製することに成功した。ここでは、素子の温度を熱電対で読み取っているが、熱電対をつける位置によって大きな誤差が出ることがわかり、正確な温度測定ができる対策を考える必要がある。将来的には、放射温度計で素子の温度勾配を観測したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、1対のp-n接合を作製し、その特性を評価した。令和4年度は、東大の超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点を利用して、微細加工により接合の個数を増やした素子を作製し、その熱電特性を評価する。それと同時に、熱流の解析を行い、トランスバース型熱電素子に最適な素材及び構造を調べる。将来的には、ヒートガイドや微細加工により、熱流を制御した、熱LSIを用いた熱電素子の作製を行いたい。 電気二重層キャパシタを応用した形状の熱電変換素子の作製は、令和3年度に予定していた計画が達成されていないが、引き続き、SWCNTをセパレータで挟み積層させ、素子の作製を行う。また、室温動作をするための装置開発と、最適な電解質の探索を引き続き行う。
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