研究実績の概要 |
電子LINACの15-kW(0.455-mA)の33-MeVの電子ビームにより駆動されるタングステンの中性子源を用いる小型のビーム成形装置(BSA)を設計し試作した。新規ホウ素薬剤の利用によりもたらされる腫瘍組織と正常組織の65ppmと0.65ppmの10B濃度を仮定し、BSAのビームを照射されるファントム内のRBE線量率をシミュレーションにより計算した。正常組織の線量の最大を10Gyに制限する場合、ファントム内の治療効果の生じる深さ(AD)は8.7-cm、BSAのビームの照射時間(IT)は2361秒と評価された。この結果から、新規ホウ素薬剤を利用する場合、BSAのビームは許容できる照射時間のうちに大脳の中心付近に位置する腫瘍に治療効果のある線量を処方できることが分かった。試作されたBSAのビームの性能を検証するために、北大電子LINACの0.3-kW(0.009-mA)の33-MeVの電子ビームを用いて中性子測定実験を実施した。水ファントムの軸上に設置された9枚の金箔試料にBSAのビームを照射した。金箔試料の誘導放射能を測定し、入射電子のビームパワー当たりの197Au (n,γ) 198Au 反応率[cm-3 s-1 kW-1]を求めた。比較のために、197Au (n,γ) 198Au 反応率[cm-3 s-1 kW-1]をシミュレーションにより求めた。反応率の測定結果とシミュレーションの結果の差異は10%を超えなかった。このことはタングステンターゲットにおける制動放射X線と光中性子の生成のシミュレーションが妥当であることを示している。シミュレーション計算はBSAのビームを照射されたファントムのADやITの妥当な見積を与えることが検証された。
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