研究課題/領域番号 |
20K05459
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
古川 俊輔 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70625590)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | σ非局在分子 / 有機半導体 / 有機磁性体 / ハロアレーン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「σ非局在系分子」を開殻構造の新たな担い手とし、その分子結晶中の分子間相互作用を明らかにし、これらの磁気特性および導電性を評価することである。目的達成に向けた今年度の達成項目は主に下記の2点である。 1) σ非局在系分子の合成手法の確立 アリールハライド(Ar-X)とカルコゲナート(R-Ch-)とのSNAr反応によって、いくつかの新規分子を合成することに成功している。また合成した分子の構造および分子間相互作用を明らかにした。これらの分子群の特徴は、従来までの開殻分子の代表格であったπ共役系の平面的な電子非局在化と異なり、3次元的に電子が非局在化する余地があるという点である。この特徴は、実際に合成した分子の構造をもとに理論計算した結果からも裏付けが取れる結果となった。 2) σ非局在系開殻分子の合成 前項で示した新規σ非局在系分子群を一電子酸化することで、開殻系分子へと変換する試みをした。一つ目の手法は、「電解酸化法」で、この手法は開殻分子を合成すると同時に、構造解析に必須な単結晶を得うることが強みである。しかし、化合物の酸化電位が従来分子を比較して低く、対応する一電子酸化体(開殻分子)を得るに至らなかった。別法として、「化学酸化法」による開殻分子の検討も行ったが酸化剤の酸化力が不十分であったためか、こちらの手法でも目的物を得られない状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の達成のためには、大きく分けて3つのステップを克服する必要がある。第1ステップは「σおよびσ-π混合非局在系分子の合成法の確立」である。初年度の進捗目標は、この第1ステップの達成と定めており、現在に至るまでに既に達成することができた。また第2ステップは、合成した分子の基本的な電子状態や分子間相互作用を明らかにすることである。当該年度(本年度)は、この2つ目のステップを達成したことにあたり、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の想定通り、第3ステップに順次着手する。 第3ステップは、「分子を開殻構造にし、その分子配列を明らかにする」ことである。初年度の検討で既に電解酸化による開殻種の合成は着手している。しかし、数種類の化合物に関していくつかの条件で電解酸化を行ったが、構造解析に適した単結晶を得るには至っていない。今後は、種々の化学種および条件で継続的に検討を行い、開殻種の構造を明らかにしていく。また、得られた結晶の磁気特性・導電性を評価する。
|