研究課題
基盤研究(C)
当初計画した,ペプチド触媒のアミノ酸配列とその触媒反応結果との間に何らかの相関を見出すということに関しては,明確な結論を出すことはできなかった。その一方で,非共有結合的に基質を活性化するN末端グアニジル化強塩基ペプチド不斉触媒を新たに見出し,これを用いたβ-ジカルボニル化合物のニトロオレフィンへの高エナンチオ選択的1,4-付加反応に成功した。さらに,基質を2-ニトロビニル基を有する面不斉[2.2]パラシクロファンにしたところ,高効率で速度論的光学分割が進行することも見出すことができた。
有機合成化学
グアニジンにキラルな置換基を結合させた強塩基性不斉触媒はこれまでに報告例があるものの,決まってグアニジンが2本以上の結合を介して不斉源とつながった形をしていた。今回我々が見出したペプチド触媒は,グアニジンが1本の結合のみで不斉源とつながった構造をもち,このことによってかさ高い基質の反応を触媒できることが示された。また,面不斉化合物の速度論的光学分割では,一般の低分子触媒ではほとんどキラリティーの認識ができないことが判明し,この点でもペプチド触媒という新しいタイプの有機触媒の有用性を示すことができた。