研究課題
基盤研究(C)
移動水素化反応を持続循環型へ転換するため,環境負荷の低い水素ドナーを水素源とするヒドリド(水素化物イオン)錯体について研究した。中心金属ルテニウムにヒドリドが直接結合した金属ヒドリド錯体や有機配位子上に構築される有機ヒドリド錯体に加え,これらのヒドリドが同一分子中に形成した金属・有機複合ヒドリド錯体の生成及び反応性に関する研究を実施した。同位体標識された水素ドナーを用いた実験や多様な錯体での実験結果を基に,各種ヒドリド錯体の形成プロセスや反応性を明らかにした。
無機化学
化石資源に依存しない水素社会の実現に向け,水素に関する直接的・間接的な活用技術の開発が急務である。不飽和結合を含む様々な有機化合物に水素を導入する水素化反応は,最も基本的かつ重要な化学反応の一つである。危険性を伴う高圧水素ガスを使用しない水素化反応として注目されている移動水素化反応について,本研究で得られた新たな水素ドナーや反応プロセスに関する研究成果を応用することで,移動水素化反応が環境適合性の高い持続循環型へ転換できる可能性を示した。