研究実績の概要 |
高分子グラフトナノ粒子(Polymer Grafted Nanoparticles: PGNPs)は、無機物であるナノ粒子を高分子バルクの中に固定化させることができるため、無機と有機物の利点を併せ持つ高機能性高分子材料として注目を集めている。特に、高分子バルク中でナノ粒子に秩序構造を持たせることで、さまざまな熱的・光学的特性を制御できることが示されてきた。しかも、PGNPsは、我々の先行研究において、ナノ粒子表面にグラフトされた高分子鎖の熱的な揺らぎによって、ナノ粒子間に複雑なエントロピー相互作用をもたらすことがわかっており、その相互作用を制御することで、多彩な秩序構造を形成する可能性が示されてきた。さらに、PGNPsは星型高分子とのアナロジーで、その濃縮系においてダイヤモンド構造を形成する可能性が考えられており、メタマテリアルとしても利用できる可能性がある。そこで2022年度は、PGNPSの凝集体であるPGNPs膜の構造を分子動力学シミュレーションを用いて調べた。その結果、ダイヤモンド構造の一つ手前のBCC構造を得ることができた。この結果は、分子動力学法で初めてPGNPsがBCC構造に相転移することを直接的に観測した初めての事例としてSoft Matter誌に掲載された。また、本結果はSoft Matter誌のFrontカバー論文として選出された(M. Ishiyama, M. Asai, et al., Soft Matter, Vol.18, 6318-6325 (2022))。現在はさらにPGNPs膜を濃縮することで、ダイヤモンド構造を得られるかどうかを検証していている段階である。
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