研究課題/領域番号 |
20K05898
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
藤田 裕之 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (70523819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血圧降下作用 / 動脈弛緩 / 摘出血管標本 / 食品 / 血管内皮由来弛緩作用 |
研究実績の概要 |
ラットを用いた動脈弛緩活性試験系について検討した結果、頸動脈だけでなく、腸間膜動脈を使用した実験系を立ち上げることができた。この時、頸動脈は初期の張力を1.0 gとすることで弛緩反応を観察するには最適であったのに対し、腸間膜動脈では血管がこれよりも細いためか、0.5 gで十分であることがわかった。また、実験動物としてSDラットを使用して評価してきたが、WKYラットでの評価も可能であることがわかった。生後30週齢を超えると、SDラットでは、体重が500 gを超え肥満化することがわかったが、WKYは300 g程度と肥満化することはなく、これらのラットを使い分けることで、種々の評価が可能と考えられたが、これらのラットでの薬物に対する血管反応には基本的にはあまり変化は認められなかったことから、今後はSDラットでの評価を進めることとした。 そこで、各種健康食品に使用されている食品抽出物について動脈に対する反応性について検討した。その結果、多くの抽出物はまったく無反応であり、数種の抽出物では逆に収縮作用を示すものが認められたが、ブルーベリー葉熱水抽出物に強力な弛緩活性を示すことを見いだした。この弛緩活性は使用した摘出標本により異なったが、ED50は約0.5 mg/mLであることがわかった。 一方で、この弛緩活性は、使用した摘出標本により、繰り返し処置することで弛緩活性が減弱する場合があり、タキフィラシーを示すことが示唆された。ただ、必ずしもその様にならないこともあり、使用したラットによるのか、摘出時の実験手技によるのか、検討を進めたい。 そこでこの抽出物の弛緩活性の基本的な作用メカニズムについて検討した結果、アセチルコリンにより弛緩反応が認められない、血管内皮が機能していない血管では弛緩活性が認められなかったことから、この抽出物による弛緩反応は血管内皮依存性であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ラット頸動脈の摘出血管を用いた動脈弛緩反応試験系を用いてスクリーニングを行うことである。これには、亀岡、京都地域で栽培されている野菜類の熱水、またはアルコール抽出物のライブラリーや、さらにこれらに加え、他の食品素材も合わせて最終的には200種程度の抽出物について評価を行い活性のある抽出物を得、スクリーニングを行う予定としていた。 昨年度においては、まず、各種健康食品に使用されている食品抽出物について動脈に対する反応性について検討した。その結果、多くの抽出物はまったく無反応であり、数種の抽出物では逆に収縮作用を示すものが認められたが、ブルーベリー葉熱水抽出物に強力な弛緩活性を示すことを見いだした。この弛緩活性は使用した摘出標本により異なったが、ED50は約0.5 mg/mLであることも見いだしており、当初の目的をほぼ達成できていると考えている。 しかしながら、まだ昨年度再現性も含めて評価できたものは100種類未満であり、目標とした200種はスクリーニングできていないため、さらに弛緩活性の強い抽出物のスクリーニングを進めていく。特に、当初の目的である、老齢化ラットに有効な血圧降下作用を示す物質を探索すると言う観点では、老齢化により血管内皮機能が減弱しているため、十分な活性を示さない可能性があるため、高齢化SDラットを使用しての評価を行う予定である。また、このスクリーニングの対象として、地場の京野菜の抽出物も含めて追加して実施し検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、動脈弛緩活性を示す物質として見いだしたブルーベリー葉抽出物は、血管内皮依存性であり、本科研費の目的である、老齢化ラットでは血管内皮機能が減弱しているため、十分な活性を示さない可能性がある。そこで、さらに弛緩活性の強い抽出物のスクリーニングを進めていく。このため、高齢化SDラットを使用しての評価を行う予定である。スクリーニングの対象として、地場の京野菜の抽出物も含めて実施する。 一方、ブルーベリー葉抽出物の弛緩作用について、タキフィラシーを示すことが示唆されたが、これについて明確にするとともに、実験系のさらなる改善を行い、繰り返し弛緩作用が得られる条件を見いだす。これにより、弛緩反応の作用メカニズムの解明を進めていく。昨年度では、この反応が、血管内皮由来の弛緩反応であることがわかったが、これには、血管内皮由来弛緩因子(EDRF)としては、一酸化窒素(NO)やプロスタグランディンI2が知られており、これらのEDRFの関与について検討する。さらに、ポストレセプターについて検討するため、血管弛緩反応を示す血管作動生ホルモンであるブラジキニン、タキキニン類の種々のアンタゴニストの前処置による影響について検討を進める。 さらに、ブルーベリー葉抽出物に含まれる弛緩活性物質の単離構造決定のため、まず、逆相系樹脂を用いたオープンカラムを使用し、メタノール濃度をステップワイズに上昇させて分画し、弛緩活性の強い画分を見いだす。さらに、活性画分を大量に分取後、分取HPLCを用いて分画し、活性示すピークを同定する。最終的には、他の分離モードのカラムを使用して単一のピークにまで精製し、LC-MS、あるいはNMRにより活性成分の構造の解析を行い、推定できるところまで実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度購入したLC-MS用のフォトダーオードアレイ検出器が、予定額よりも安価に購入することができた。そのため、その分を動脈弛緩活性に使用する、ラットの購入費、試薬類にあてることができたため、次年度に繰り越すことができた。 一方、2021年度購入予定の小動物血圧測定装置は、当初予定したものよりも高性能な装置を購入予定にしている。この装置では無加温でラットの血圧を測定できることから、侵襲性の低い装置であり、その分当初予算よりも高価なものとなっている。そのため、今年度の予算のみではまかなえないため、これに合わせて購入予定にしている。
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