研究課題/領域番号 |
20K06021
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
吉田 康徳 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (40291851)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イチゴ / 休眠 / 収量 / 葉柄長 |
研究実績の概要 |
イチゴの花成は,低温・短日で起こるが,休眠状態が花成に作用するため単純ではない.特に,休眠覚醒後の花成の日長反応消失機構は,2ヶ月程度も継続するメカニズムは長年の謎であった.その鍵となる生理機構は『休眠』である.休眠状態は低温遭遇量で制御され,イチゴの場合,茎頂が含まれるクラウン部のみが低温を感応するとされ,それ以外の部位(葉と根)での感応は見落とされてきた.そこで、第一に,部位別に異なる休眠状態の個体を作出し,成長動態を解析を目指した.令和2年度は,休眠に作用する部位別の温度処理を行ったが,鉄欠や生育不良により,明瞭な違いを明らかにできなかったため,令和3年度は,再度,温度処理方法を改善して,さらに詳細に休眠に及ぼす温度処理の影響を検討した. その結果, 5℃以下の低温遭遇量は,部位別温度処理によって,いずれの処理区でも部位別に異なる遭遇時間に制御できた.休眠打破の指標となる葉柄長は葉加温+クラウン加温+根冷却やすべて加温した区で比較的短い傾向が認められ、そのほかではあまり差が認められなかった.低温量が作用する収量は,5月下旬から6月上旬にかけてピークとなった.規格ごと果実数は,すべて加温区と葉加温+クラウン冷却+根加温区が優位に大きいことが認められた。しかし果実重ではすべて加温区より葉加温+クラウン冷却+根加温区の収量が最も大きくなった. これにはすべて加温区は5g未満の果実が多く果実数は多いが果実重はないことからこのような結果になったと考えられた。また,部位別に温度処理した結果,今後の検討は必要であるが,果実数は,加温に関してクラウン≒根>葉であること,冷却に関してクラウン>根≒葉であることが示唆された.果実重は,加温に関して葉≒クラウン≒根であること,冷却に関してクラウン>根>葉であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,接ぎ木によって低温遭遇量が異なる個体の作出を目指していたが,必要とする接ぎ木苗が作出できなかったので,引き続き,接ぎ木方法を改善して,検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
接ぎ木による異なる低温遭遇量である個体の作出,植物成長調整物質の影響に関しては,休眠の指標となる葉柄長の伸長に強く作用するのがジベレリンであることから,ジベレリン処理,その生合成阻害剤の影響を検討し,低温時の成長ならびに休眠打破後のジベレリン処理の影響を検討する予定である. また,部位別の低温遭遇量の影響をさらに詳細に検討するため,5℃程度の低温室にイチゴを搬入し,光合成に必要な光量をLEDで補光する実験手法で,明確な処理方法の違いを明らかにする予定である.さらに,植物成長調整物質の動態に関しても解析を検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品が少なかったこと,コロナ禍によって旅費の支出が少なかっため.
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