研究実績の概要 |
申請者は, 5℃以下の低温遭遇量を調整し,花芽分化を促進する半休眠状態を維持できる葉,クラウンおよび根の部位別加温を検討した結果,休眠を制御するためには,クラウン(クラ加温)が適したが,果実生産には,光合成を担う葉柄長や葉幅の栄養成長を適度に促進する加温方法も考慮する必要があると考察した.このことは,休眠覚醒後の花成の日長消失機構がクラウン部に内包される茎頂が作用していることが示唆された.さらに,休眠覚醒後に起きる旺盛な栄養成長と休眠そのものにも関連するジベレリンとの関係を明らかにするため,ジベレリンとその生合成阻害剤の影響を検討するため, GAとAnti-GA(ビビ区)を組み合わせ生育と収量に及ぼす影響を検討した.その結果,休眠覚醒に必要な低温遭遇量が1,200時間程度と大きい ‘はるみ’では,葉柄長と葉幅は無処理区とビビGA区で大きく,ビビ区で生育過多を抑制できた.果実数はビビ区とビビ+GA区で少なく,果実重はビビGA区で小さく,総収量は無処理区,ビビ区,ビビ+GA区の順で多かった.低温遭遇量が200時間と小さい‘とちおとめ’の葉柄長は無処理区で大きく,ビビ区とビビ+GA区で小さかった.葉幅は‘はるみ’と同様であった.果実数と果実重はいずれの処理区でも同程度で,総収量も同程度となった.以上より,クラウン加温処理は休眠制御には適しているが、果実肥大のため栄養生育を促進する必要があるため、それらを促進する根加温が本栽培法に適した加温方法と考えられた。植物成長調整物質処理による休眠制御では,両品種とも,ビビフル処理は休眠打破を抑制する傾向にあったが,植物成長調整物質処理では増収しなかったため,GAの濃度を低く,ビビフルの濃度を高くして処理の効果を高めて再検討が必要であった.なお,イチゴ株への植物成長調整物質のインジェクション処理では,明瞭な違いが認められず,処理方法も含め再検討が必要であった.
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