研究課題/領域番号 |
20K06108
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
加藤 禎久 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (40625092)
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研究分担者 |
菱山 宏輔 専修大学, 人間科学部, 教授 (90455767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 伝統的緑地 / 緑地機能 / 農村 / バリ島 / 観光化 / 地域開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、インドネシア・バリ島の伝統的家屋敷の一部である小規模な「外庭」、テラジャカン(以下、TJ)を研究対象にしているため、新型コロナウイルスの影響で2020年度と2021年度はフィールド調査ができなかった。2022年度は事前にインドネシア入国・日本帰国に関する規制情報を十分に収集、準備したうえで、研究代表者は8月下旬に、研究分担者は2月下旬に現地調査を行った。
中山間部のプンリプラン村の目抜き通りに面するTJを対象に、生態的および社会文化的調査を行った。生態的調査では、植栽調査により、家主がどんな機能を持つ植物を重視しているのかを明らかにする。調査では、①植物種および機能(例、宗教儀礼用、薬用、美化等)を同定し、②種数、各種の個体数をカウント、③階層構造の多様性を調べるため、全種を5つの高さ区分に分類した。また、社会文化的調査では、アンケート調査票を作成し、行政長・慣習村長を通して対象世帯に回答を依頼し、後日回収した。調査項目は、①社会階層に関する基礎情報、②TJに植える植物の選択状況とその理由、維持管理と活用状況である。
これまでの分析で、更なる観光化の進展が植栽に影響を与えていることが明らかになった。2019年の事前調査時と比べて、まず、村の入り口の門、トイレ、看板などの施設・設備が新しくなった。TJ植栽に関しては、同じような観葉植物が増え、種数が減少した。この結果は、慣習村長のインタビューによって、青年団の発案で、上部・下部、東西の4つの区画に分けて異なるデザインにし、区画ごとに植栽と素材を統一した、というインタビュー内容と一致した。観光客の増加に対応するため、多機能性を持ったTJが審美性とデザイン性を重視したものへと変化している。つまり、TJの役割は、香りと見た目の美しさへとシフトしており、これは観光客に楽しんでもらうための変化と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的感染拡大および渡航制限により、2020年度に続き2021年度も予定していた海外フィールド調査を行うことができなかったため。研究期間の延長を申請し、当初3年間の予定だったフィールド調査を、2022年度と2023年度に凝縮して実施することにした。海外調査に伴う支出計画などの見直しも行った。
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今後の研究の推進方策 |
プンリプラン村における包括的な研究では、植栽調査と並行してアンケート調査およびインタビューを活用する。生態的分析結果の中でも特に植物の機能、種の多様性(種数)、機能の多様性(機能数)に着目し、TJ面積と種数の相関を考慮した上で、どんな社会文化的要因が影響を与えているのかをアンケート項目の要素から多変量解析手法を用いて明らかにする。さらに、統計的に選択された要因だけでなく、アンケートの自由記述部分やインタビューの内容からTJ植栽の植種選択や維持管理に関して住民がどのような要素を重視しているのかを理解する。それらの要因(例えば、維持管理の容易さや販売価格など)も考慮に入れる。
2023年度には、近隣の中山間地帯に位置する未開発のTJが存在するチェケン村で、プンリプラン村と同様の研究手法を適用する。ここではTJの植栽、利用、管理の現状を調査し、2つの村の結果を比較分析する。その結果、TJ植栽に影響を及ぼす可能性のある社会文化的要因を明らかにする。観光化が進行する現状を考慮に入れ、これらの結果はTJの保全や活用について行政や住民組織への具体的な提案を可能にするものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴う渡航規制により、当初研究予定期間の初年度と次年度に海外フィールド調査が全くできなかったため。研究期間を延長し、2023年度は8月下旬にインドネシア調査を予定し、その際の旅費および謝金に使用予定である。
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