研究課題
樹木の心材形成機構および心材腐朽過程を明らかにするため、落葉広葉樹4種(タラノキ・ヌルデ・ミズナラ・ヤマザクラ)の苗木を緯度の異なる4地域(北海道足寄町・秋田県大潟村・埼玉県秩父市・静岡県浜松市)に植栽し、定期的に木材試料を採取・解析することで、4樹種の木部の老化特性に関する基礎知見を得た。これらの知見を基に、通水機能の停止および柔細胞の死による心材形成の識別と、心材腐朽菌の感染経路の可視化に関する技術確立に取り組んだ。着色した木部が認められた個体は、秩父および浜松に植栽したタラノキ・ヌルデと足寄のヤマザクラであった。そこで最終年度における研究として、秩父・浜松に植栽したタラノキ・ヌルデを対象に心材腐朽菌類であるナミダタケモドキを地際付近の主幹に接種し、感染の確認と侵入経路の特定を組織学的手法を用いて検討した。侵入した菌糸を特定するために、接種部近辺の木部から凍結ミクロトームを用いて切片を切り出し、F-WGA染色後、蛍光顕微鏡を用いて検鏡した。その結果、2種とも主に道管と木部繊維、柔組織内にて菌糸が観察され、ナミダタケモドキは傷口から道管や木部繊維などの死んだ古い組織の内腔を利用し、効率的に侵入していくことが考えられた。本研究結果から、タラノキ苗木のように、植栽から1-2年後に心材形成が起きる樹種の存在が明らかになった。着色した木部に心材腐朽菌の侵入が確認できたことから、心材腐朽を理解する上で本研究成果は有用な技術として用いられ、心材形成と心材腐朽過程を明らかにする上で基礎研究として活用されていくと考えられる。
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