近年、地球温暖化が顕在化し、一部では植物病害の北上が知られている。これらの病害のうち、宿主に強く依存する樹木病原菌の場合、宿主の移動を伴うことが必要と推察される。しかしながら実際には栽培植物ではない場合、植物区系を宿主植物が移動する必要があるが植物病原の発生記録は、一見、特定の病原のみが分布を拡大しているように見える。本研究では各地で発生する植物に強く依存する植物病原の一部は確かに分布を拡大しているが、それぞれの地域で分化した多様な種も存在することも明らかになった。今後も、重要病原の分布拡大、寄生性の分化につづく種分化、多様性の把握等の研究が、正確な樹木病害診断の上で必要である。
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