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2021 年度 実施状況報告書

2019年夏季に発生したアコヤガイ大量死は滑走細菌症か?-原因究明と診断法開発-

研究課題

研究課題/領域番号 20K06203
研究機関富山大学

研究代表者

酒徳 昭宏  富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (20713142)

研究分担者 一色 正  三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30378319)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードアコヤガイ / 細菌感染症 / Vibrio sp. MA3 / ヘモリシン / Tenacibaculum sp. Pbs-1 / LAMP法
研究実績の概要

本研究の目的は, 2019年と2020年の夏季に発生した, アコヤガイの外套膜が委縮し, 軟体部が黒変する大量死 (軟体部萎縮症) の原因究明と, アコヤガイの殻の内側が黒変し, 死亡する別の疾病 (殻黒変病) の原因細菌Tenacibaculum sp. Pbs-1株の特異検出法の開発である。2021年度の実施状況について以下に報
告する。
1. 軟体部萎縮症の1因として示唆されたVibrio sp. MA3株のヘモリシン (Vhe1) の大腸菌を用いた大量発現系の構築と精製を行い, その発現産物の溶血活性を測定した。その結果, Vhe1はこれまで報告例が少ないレシチン依存性ヘモリシン (LDH) に属し, 反応温度が高いほど活性が高く, pH7.0-10.0で50%以上の活性を保持した。また, アコヤガイの血球細胞に対する溶血活性も確認された。2.アコヤガイ成貝および稚貝,ならびにアコヤガイ以外の二枚貝類(マガキおよびムラサキイガイ)に対するMA3株の感染実験を行い,病原性の特徴を確認した。その結果,アコヤガイの成貝に対するMA3株の致死的病原性は接種菌濃度に依存することが示された。また,接種されたMA3株は少なくともアコヤガイの血球で増殖し,血リンパを介して体内を移動していることが示唆された。さらに,MA3株はアコヤガイの稚貝にも感染することが分かった。一方,MA3株はマガキよりもムラサキイガイに対して強い病原性を示すこと,およびMA3株の宿主貝の体内における感染動態は貝の種により異なることが明らかとなった。3. 殻黒変病の原因細菌Tenacibaculum sp. Pbs-1株の特異LAMP法の開発を行った。その結果, 迅速 (反応時間35分), 高感度 (50pg DNA), 特異的, 目視検出可能なLAMP法を開発することに成功し, 特許申請中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者らは, 2019年と2020年の夏季に発生した, アコヤガイの外套膜が委縮し, 軟体部が黒変する大量死 (軟体部萎縮症) を引き起こす1因であるVibrio sp. MA3株の病原性と, 病原因子ヘモリシンの溶血活性の特徴を明らかにした。さらに, アコヤガイ殻黒変病の原因細菌Tenacibaculum sp. Pbs-1株の特異LAMP法を開発することができた。本研究は, 計画通り順調に進展している。

今後の研究の推進方策

2022年度は, 以下の実験に着手する予定である。
1. MA3株が産生するヘモリシン (Vhe1) のホスホリパーゼ活性 (アコヤガイ血球細胞の細胞膜を構成するリン脂質の分解活性) の特徴を詳細に解析する。精製Vhe1の様々なリン脂質に対する至適温度や熱耐性など酵素学的諸性質を調べる。2.Vhe1のアコヤガイに対する病原性を調べる。精製Vhe1をアコヤガイに注射し,その病原性を確認する。3.ムラサキイガイに対するMA3株の感染実験を行い, ムラサキイガイに対するMA3株の病原性を詳細に検討する。4.MA3株の伝播経路の推定を行う。MA3株に感染したムラサキイガイと健常なアコヤガイが同居する感染実験を行い,MA3株が飼育水を介して異なる宿主間を伝播すること,およびアコヤガイの貝殻に付着するムラサキイガイがMA3株の媒介生物として重要な役割を担っている可能性を証明する。5.現在特許申請準備中のLAMP法を用いて, 実環境試料 (養殖海水や感染個体) からのPbs-1株の検出を試み, その有効性を確認する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Isolation and characterization of a Vibrio sp. strain MA3 associated with mass mortalities of the pearl oyster Pinctada fucata.2021

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Sakatoku, Kaito Hatano, Shoki Tanaka, Tadashi Isshiki
    • 雑誌名

      Archives of Microbiology

      巻: 203 ページ: 5267-5273

    • DOI

      10.1007/s00203-021-02457-6

    • 査読あり
  • [学会発表] アコヤガイの大量死に関連するVibrio属細菌の解析2022

    • 著者名/発表者名
      端野開都, 一色 正, 田中翔稀, 酒徳昭宏, 鈴木信雄
    • 学会等名
      日本水産学会春季大会
  • [学会発表] 高水温期に発生するアコヤガイ大量死の原因は細菌感染によるものか?2021

    • 著者名/発表者名
      酒徳昭宏, 一色正
    • 学会等名
      アコヤガイのへい死に係る情報交換会
    • 招待講演
  • [学会発表] Isolation, characterization, and detection of a Vibrio sp. strain associated with mass mortalities of the pearl oyster Pinctada fucata.2021

    • 著者名/発表者名
      Hatano, K., Sakatoku, A., Tanaka, S., Isshiki, T. and Suzuki, N.
    • 学会等名
      金沢大学環日本海域環境研究センター国際シンポジウム
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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