研究課題/領域番号 |
20K06388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
都築 圭子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (30364251)
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研究分担者 |
藤田 直己 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10554488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 犬角膜上皮細胞 / 肝細胞成長因子 |
研究実績の概要 |
今年度は、犬角膜上皮細胞に対する肝細胞成長因子(HGF)の作用を検討するため、犬角膜上皮細胞におけるHGF受容体であるc-Metの発現解析とHGFによる作用の解析を行った。犬角膜上皮細胞のc-Met発現を免疫染色にて解析したところ、比較的肥大した細胞においてc-Metの発現を認めた。小型で増殖している細胞においてはc-Metの発現は低い傾向にあり、c-Metは比較的分化・成熟が進んだ角膜上皮細胞に発現すると考えられた。 次に、c-Metのリン酸化について検討するため、犬角膜上皮細胞を50ng/mLのリコンビナントヒトHGFで刺激をおこなったところ、c-Metのリン酸化は添加後15-30分で亢進した。次に、犬角膜上皮細胞に対するHGFの作用を検討するため、培地に0-100ng/mLのリコンビナントHGFを添加して増殖能に対する影響を検討したが、HGFの添加により細胞増殖能への影響はみられなかった。次に、Migration Assayを行ったところ、50-100ng/mLの濃度で細胞の運動能が有意に上昇することが明らかとなり、HGFは犬角膜上皮細胞の運動能の上昇に寄与することが明らかとなった。したがって、犬角膜損傷において、HGFは角膜上皮細胞の増殖促進には寄与しないが、運動能を上昇させることにより損傷部の上皮化速度が上昇することが期待できた。 また、研究計画を一部変更し、角膜上皮以外に角膜内皮についても研究に取り込むことを目的として、犬角膜内皮細胞の培養に取り組み、犬角膜内皮細胞の培養条件を検討した。培養法の確立には至っていないが、犬角膜内皮細胞の培養が可能であることを確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は計画を一部変更して犬角膜上皮細胞に対するHGFの作用について再検討を行い、今後の研究の基盤的情報を得ることとした。角膜上皮細胞とシートの重合は昨年度確認できているが、コロナ禍の影響もあり動物実験については進捗が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
犬角膜上皮細胞シートとHGF産生シートの相互作用の検討を加え、犬角膜上皮細胞の再生にHGF産生シートが与える影響を解析する予定である。動物を用いた実験が可能であれば、重合シートの移植を行う予定である。また、研究の予定を一部変更し、HGF産生シートを構成する犬BM-PACsが産生するエクソソームの解析を進め、HGF以外の治療機序の探索を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
犬を用いた動物実験を予定していたが、コロナ禍の影響もあり動物実験を進めることが困難であったため、それらに使用する予定の予算を繰り越して使用することとした。今年度は動物実験を行う人員の確保に努め、重合シートの移植実験を行う予定である。
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