ほ乳類の食道筋層は、口に近い部分が横紋筋で胃に近い部分が平滑筋で構成されているか、もしくは全長に渡って横紋筋で構成されている。これは、小腸や大腸とは異なった、食道に独特の特徴である。食道横紋筋の機能を解明することで、食道梗塞や巨大食道症といった食道特有の運動疾患の解決に向けて有効な情報を得られると考えられる。本研究をさらに発展させることで、例えば、食物の温度を適度に調節する、あるいは温度感覚に影響する食物成分を活用することで適切な嚥下運動を実現することが可能となるかもしれない。すなわち、薬物や手術などによらない新たな嚥下障害の治療法の開発に結びつくことが十分に期待できるといえる。
|