研究課題
令和2年度に実施予定であった重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTSV) のNタンパクによるアポトーシス阻害効果の検討では293T細胞にNタンパクを強制発現させると過酸化水素およびActinomycin D誘導性のアポトーシスが減少することを明らかにした。TNFαやFasLといった外因性アポトーシス誘導剤に対しては、293T細胞は感受性が弱く、細胞死の誘導が認められなかった。TNFαやFasLについてはB細胞性リンパ腫由来細胞株であるRaji細胞の感受性を確認したが、プラスミドの導入が困難であり解析が進んでいない。令和3年度には強制発現のベクターを検討した継続予定である。このため、令和3年度および令和4年度に行う予定であった実験を先に実施した。まず、令和3年度に実施予定であった骨髄巨核球のアポトーシスおよびIgG沈着の解析を行った。IgG陽性の巨核球は、SFTSV陰性症例では10%に満たなかったが、SFTS症例では50%程度に上昇、cleaved-Caspase3に陽性のアポトーシス細胞はSFTSV陰性例ではほとんど認められなかったのに対し、SFTS症例では約40%と大幅に増加していた。令和4年度実施予定であったSFTSにおける壊死巣の解析では、まず細胞死の種類を解明した。リンパ節のT細胞では概ねcleaved-Caspase3および8陽性であり外因性アポトーシスが生じていると考えられたが、肝臓ではcleaved-Caspase3陰性、Gasdermin D陰性となりネクローシスと考えられた。リンパ節T細胞に対する細胞死誘導機序を解明するためにSFTSVのNおよびNSsタンパクを強制発現させたRaji細胞でのTNFα、TRAIL、PD-L1、FasLの発現を調べたところNSsタンパク強制発現細胞でFasLの発現が上昇しており、T細胞の細胞死の原因の1つと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Raji細胞への遺伝子強制発現系が不安定であり、令和2年度実施予定であった課題の一部が実施できなかった。しかし、それに替えて令和3年度および4年度に実施予定であった課題の一部を実施したため、概ね順調と言える。Raji細胞に対する遺伝子導入は系を変えて実施予定である。
令和2年度実施予定であったRaji細胞を用いたアポトーシスの実験については遺伝子導入系を変更して実施予定である。令和3年度実施予定の骨髄巨核球の解析については、ある程度先んじて行ったが、未実施であるIgM免疫染色を行うと共に抗体沈着とアポトーシスの相関を解析する予定である。令和3年度実施予定の課題については特に支障なく実施可能と考えている。
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Emerging infectious diseases
巻: 27 ページ: 1068-1076
10.3201/eid2704.204148