研究課題
増殖因子受容体活性化の構造基盤を解明し、高度な受容体制御を達成することを目的として、以下の研究を進めた。1)Met活性化の構造基盤解明とがん病態との関連:生細胞膜上で短時間ごく微量に形成される増殖因子ー受容体のnativeな活性複合体の構造を検出することは困難である。生細胞膜上で形成されたnative複合体を化学架橋によって固定し分離精製する系を確立した。このnative複合体の高速原子間力顕微鏡観察によって得られた構造的知見を生化学的検証で確認した。さらにクライオ電子顕微鏡による高解像度の構造解析を進めている。2)環状ペプチド固相化AFMプローブによる受容体の空間力学制御:Met結合環状ペプチドを固定したプローブを用いたHS-AFMによって、非標識Met受容体をリアルタイムかつ実空間で認識する方法を検証し開発した。標識なしで分子認識できる本手法の応用範囲は広いと考えられる。3)分子ツールと治療を志向した環状ペプチド提示抗体による受容体制御:ヒトIgG1抗体Fcのループ構造にMetT結合環状ペプチドaMD4を提示したFcを作製し、この組換えタンパク質がMet受容体を活性化できることを実証した。ペプチド内挿により、Fcの高発現能、FcRn受容体との結合による長い血中半減期、そしてFabとの組み合わせ能に影響しないことを確認した。さらに抗トランスフェリン受容体抗体のFcにaMD4を挿入することによって血液脳関門を通過し末梢から脳内に到達するMet受容体アゴニストを作成した。以上の成果は、血中半減期が短い、脳内に到達しないといった増殖因子の欠点を克服する増殖因子ミメティックの作成を可能にし、増殖因子の治療適応を拡大する技術基盤となる(論文発表済み)。マウス非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルにおける長期作動性Metアゴニストの治療効果を検証中である。
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Nature Biomedical Engineering
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Developmental Cell
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