本研究の目的は、細胞がタンパク質分泌を制御する分子機構の解明である。私たちは、インフルエンザウイルス・ヘマグルチニン(HA)の同調輸送実験系を構築し、ゴルジ体から細胞膜へのHA輸送を仲介する輸送小胞の形成を可視化することに成功した。HA輸送小胞の形成には、小胞体とゴルジ体の膜接触部位で行われるコレステロール輸送が必要であり、小胞体膜のコレステロールセンサーであるSCAPは、コレステロール輸送を促進してHA輸送小胞の形成を誘導している可能性が示唆された。本研究からはまた、ゴルジ体膜の切断に働くと考えられていたプロテインキナーゼDが、輸送小胞に特定の積み荷を搭載する役割を担う可能性が示唆された。
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