現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、ポリリン酸によるαシヌクレインのアミロイド線維形成の促進機構に関して論文発表した(Yamaguchi, K. et al., J. Biol. Chem. 296, 100510, 2021)。令和3年度は、酸または塩を用いてβ2ミクログロブリンのアミロイド線維形成におけるアニオンの役割りについて論文発表した(Yamaguchi, K. et al., J. Biol. Chem. 297, 101286, 2021)。 現在、二相分離の実験系を構築して、液-液相分離とアミロイド線維形成との関連について検討している。位相差顕微鏡または蛍光顕微鏡を用いて、形成した液滴を観察した。また、静置あるいは超音波照射下で、アミロイド線維形成実験を行った。その結果、特に液滴の界面でアミロイド線維形成が促進されることが示唆された。また、アデノシン三リン酸(ATP)の添加により、アミロイド線維形成が細胞内の濃度に匹敵する数mMで促進された。生体内では、ATPはエネルギー通貨としての役割があり、重要な生体分子であるが、コスモトロピックなリン酸基を3つ持っており、過飽和状態が崩れることで、蛋白質凝集反応が促進されると考えられる。液-液相分離とATPによるアミロイド線維形成について、多価の電荷をもつ生体高分子の生理的役割について考察する。 また、ポリリン酸を用いて、アルツハイマー病の原因蛋白質であるタウ蛋白質のアミロイド線維形成について調べた。その結果、ポリリン酸によって、タウ蛋白質のアミロイド線維形成が著しく促進されることが分かった。タウ蛋白質には微小管と結合する領域があり、その領域がポリリン酸と結合して、アミロイド線維への構造変化を促進することが示唆された。
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