研究課題
Ragulator構造の機能解析について本年度は以下に示す解析を行った。Ragulator構造と相互作用する分子について、昨年度までにturboIDによる近接標識と質量分析による解析を行った。今年度はビオチン標識タンパク質の精製手法を変えて再度検討した。また同時に、架橋剤を用いてRagulator構造と相互作用する分子についても精製し、質量分析による解析を行った。正常なRagulator構造と一部機能を欠損したRagulator構造を用いた相互作用分子の解析結果から、正常なRagulator構造特異的な相互作用分子の集団を抽出した。多くが既知の分子であり、Gator1やGator2の構成因子も検出された。一方でGator1と相互作用してリソソーム膜局在を促すKicstor構成因子は検出されなかった。RagulatorとGator1はRagA/Cを介して複合体を形成し得ることが報告されているが、今回の結果を含め、これまでの解析結果はそれとは別の相互作用形式が存在する可能性を示している。また新たにRagulatorと相互作用する因子としてRab7を検出した。Rab7の活性とリソソームの局在や形状との関連を調べたところ、mTORC1活性とは負の相関を示すことが判明した。これまでの研究でmTORC1の活性はRab7の発現を抑制するという結果を報告してきたが、今回の観察結果はmTORC1の活性調節機構にRab7が介在し、ポジティブフィードバックを行っている可能性を示すものとなる。その具体的なメカニズムについては今後さらに調べる必要がある。
2: おおむね順調に進展している
p18コンディショナルノックアウトマウスによる生理機能解析については、当初予定の研究計画を完了し論文として報告した。また共同研究として免疫系での解析について追加の報告を行った。Ragulator構造の機能解析についてもすでに第一報の論文報告を行った。引き続いて新規制御因子の探索と新規相互作用の解析を進めている状態である。
Ragulatorと相互作用する因子の中から見出したRab7について、mTORC1活性調節における機能を調べる。Rab7の活性変異体を用いてmTORC1活性に与える影響を細胞レベルで調べる。その時に、リソソームなどの細胞内膜系の動態や、Ragulatorだけではなくインスリンシグナルへの影響についても検討し、mTORC1活性調節系の中でRab7がどの部位に作用しているのかを検討する。また、mTORC1活性の変動とRab7の活性変動の関連についても調べる。Rab7の細胞内での活性変動については調べる手段が乏しく、必要であればその活性測定系の確立を目指す。
研究の進捗に合わせて研究費を執行したが、当初の見込み額より執行額が少なくなることがあった。しかしながら研究計画に変更はなく、当初予定通りに研究を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
EMBO J.
巻: 42 ページ: e111389
10.15252/embj.2022111389.