研究課題/領域番号 |
20K06803
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
海老原 淳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (20435738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シダ類 / 倍数性 / 染色体数 / ゲノムサイズ |
研究実績の概要 |
ホングウシダ科、ウラボシ科、ヒメシダ科を中心とした、科内で複数の染色体基本数が知られているシダ類の生株(主に筑波実験植物園栽培株)を用いて、フローサイトメーターによるゲノムサイズの測定(葉組織細胞)を行った。また中藤成実氏(研究協力者)の協力を得て染色体数観察(根端細胞)とを行った。 これらのデータは生きた状態の材料を用いない限り、結果を得ることが困難とされているが、生きた材料の入手が難しい研究対象種も少なくない。ところが、真嚢シダ類では採集からやや年数が経過した胞子でもゲノムサイズを計測可能な例があることが示唆されたため、博物館に収められたハナヤスリ科(真嚢シダ類の一群)の標本を用いて、標本活用の可能性を検証した。その結果、最も古いものでは採集から20年以上経過した標本において胞子を用いたゲノムサイズの計測に成功した。したがって、次年度には標本のみが入手可能な真嚢シダ類の材料におけるゲノムサイズ測定を拡張して実施予定である。またハナヤスリ科内の解像度の高い系統関係を解明するため、研究協力者のLi-Yaung Kuo氏と共同で材料収集を進めた。 属内にx=34, 42, 44, 47など様々な先行研究で知られているホングウシダ科エダウチホングウシダ属について、染色体数と系統の対応を検証するため、国内産の材料の収集を進めた。倍数体や雑種と思われる個体が高い頻度で存在するため、核DNAマーカーを用いた系統解析が不可欠である。既存核DNAマーカーは本属への流用が困難であったため、新たなマーカー開発を進めたが、年度内には完成に至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染者増加に伴う出張の制約、研究協力者の移動制限等により、材料収集が予定よりも遅れた。エダウチホングウシダ属については、核DNAマーカー開発が難航した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスに起因した行動制限は軽減される方向にあるため、2022年度は材料収集を順調に実施できることが期待される。DNAマーカー開発については、完成の前段階まで到達しており、間もなく完成する目途が立っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染者増に伴う移動制限等により、現地調査・採集のための出張を実施できず、一部の材料が収集できなかったため、実験関係消耗品もそれに伴って予定よりも使用量が少なくなった。2022年度は感染状況が極端に悪化しない限りは、遅れていた分の現地調査を年度前半に実施でき、それに伴う旅費執行を見込んでいる。収集した材料の解析を年度内に実施予定であるため、それに伴う謝金・消耗品の支出を予定している。
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