動物において恐怖記憶は、危険な状況を回避するなど必須な記憶であるが、ヒトにおいては心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症の要因ともなり得る。PTSDは恐怖イベントを経験してから時間経過後での治療が重要であるため、時間経過した遠隔記憶の形成に寄与するシステムレベルの固定化のメカニズムを明らかにすることは、行動神経学のみならず医学的にも重要である。本研究での成果は、システムレベルの固定化の人為的な操作や分子機構解明を可能とする基盤を整え、恐怖記憶を長期的に保持・制御するメカニズムの全容解明に向け、わずかではあるが、しかし確実な前進をもたらすものである。
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