脊椎動物神経軸索の多くは、生後軸索周囲に髄鞘を形成することにより跳躍伝導を可能にする。しかしながら一旦形成された髄鞘が障害を受けると、無髄軸索に戻るのではなく軸索変性が生じる。軸索に髄鞘を繋ぎ止める部位であるAGJは、損傷を受けやすい構造であり、わずかなAGJの崩壊が限局した軸索腫脹を引き起こすことが本研究から示唆された。また、軸索腫脹の引き金が、カルシウム恒常性維持に関与する分子IP3R1の軸索局所での過剰発現であることを示し、IP3R1の発現を抑制すると軸索腫脹およびその後の神経細胞死を改善することができた。この結果は多発性硬化症など脱髄性疾患の初期病態を理解する一助となると考えられる。
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