研究実績の概要 |
発達期の大脳皮質では感覚入力に依存しない自発的神経活動が見られる。しかし、これまでの知見は主に固定組織または培養組織の実験で得られてきたため、生体内で自発的神経活動が回路形成にどのように関わるかは不明な点が多い。 これまでの研究で、2光子顕微鏡生体イメージングを用い、新生仔の体性感覚野第4層の神経細胞群に自発的な同期神経活動が存在することを発見していた。本研究の目的は、①自発的同期神経活動に関わる分子メカニズムを明らかにすること、②自発的同期神経活動と第4層神経回路形成の関連を明らかにすることであった。 2020年度までの研究で、①については、NMDA型グルタミン酸受容体の必須サブユニットNR1をノックアウトした第4層神経細胞において、自発的同期神経活動の同期レベルが低下していることを見出した。この結果は、自発的同期神経活動の強化にNMDA型グルタミン酸受容体が関わる事を示している。一連の研究成果は北米神経科学学会誌に発表した(Mizuno et al., The Journal of Neuroscience 2021、単独責任著者論文)。②については、第4層神経細胞の自発的神経活動と細胞形態を同時に生体タイムラプス観察する条件を洗練することで、両者の相関を解析することが可能となった。 2021年度は、②について、第4層神経細胞の自発的神経活動と細胞形態発達の因果関係を調べるための生体光遺伝学法の開発を進めた。2022年度は開発した生体光遺伝学法を用いる事で、②の研究を完成させることを目指す。
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