研究課題
外界からのさまざまな感覚情報入力を受けて、それらを統合・制御・出力することで高次機能を含む行動の発現が実行される。大脳基底核は、大脳皮質・視床・線条体を連関する神経ネットワークがループ構造を形成してポジティブ、ネガティブなフィードバックを行いながら大脳辺縁系とも密な神経連絡を介して、運動・認知・情動行動を精緻にコントロールしている。視床は基底核や辺縁系、小脳などとの中継核の役割を担い、近年では精神・神経疾患の発症との関係も推定されているが、複雑な入出力を形成していることから、神経回路レベルでの機能研究は進んでいない。そこで、本研究のゴールは特定の神経ネットワークを標的とした技術を用いて視床ー線条体路の生理機能研究の推進を目指し、本経路における高次脳機能に関わる行動発現の脳内メカニズムを明らかにすることである。令和3年度は、ラットにおける視床ー線条体経路の解剖学的な結合関係を詳細に解析した。視床束傍核(Parafascicular nucleus, PF)は、背外側前方線条体(anterior dorsolateral striatum, aDLS)および腹外側後方線条体(posterior ventrolateral striatum, pVLS)と強い結合関係を持ち、PF-aDLS経路およびPF-pVLS経路を標的とした経路機能操作モデル動物による行動試験を行った。
2: おおむね順調に進展している
前年度に、視床ー線条体経路への遺伝子導入とその標識経路にける神経連絡を除去することを確認していたが、線条体をaDLSおよびpVLSのsubdivisionに区別して経路標識する条件検討を行った。また、それぞれの線条体領域と視床との連絡を除去するための薬剤注入条件の検討を完了した。現在これらの条件によって、PF-aDLS経路およびPF-pVLS経路を標的とした経路機能操作モデル動物による行動試験を行い、データ解析中である。
標的経路機能操作モデル動物における行動試験の解析を引き続き行うと共に、経路除去のみではなく光遺伝学・化学遺伝学を用いた機能促進、抑制系の導入と神経活動記録実験のためのさまざまな検討を行う。
コロナウイルス感染症の拡大のため国内外の学会が中止及びオンライン開催になったこと、実験に必要な機器・試薬の搬入が遅れたことなどから、研究進行が遅れたため。また、本学動物施設の工事及びクリーニングによる動物実験停止期間があったため。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Front. Syst Neurosci.
巻: 15 ページ: 729389
10.3389/fnsys.2021.729389
Commun. Biol.
巻: 4 ページ: 1088
10.1038/s42003-021-02623-y
Viruses
巻: 13 ページ: 1387
10.3390/v13071387