研究課題/領域番号 |
20K06940
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中尾 允泰 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60550001)
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研究分担者 |
佐野 茂樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (20226038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケテンイミン / チア-マイケル付加反応 / ディークマン反応 / チオフェン / アザ-マイケル付加反応 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、ケテンイミン誘導体のチア-マイケル付加反応を起点とする多置換チオフェンの合成ならびにアザ-マイケル付加反応を起点とする多置換ピロールの合成についてそれぞれ検討した。 0.05当量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)存在下に、3-イミノアクリル酸メチルとメルカプト酢酸メチルをTHF中で加熱還流すると、チア-マイケル付加反応に続くディークマン反応が進行し、アミノ基、メチル基、ヒドロキシ基、エステル基を有する新規な四置換チオフェンが収率54-75%で得られた。また同時に、チア-マイケル付加反応に続くラクタム化反応が進行したチアゾリジン-4-オン誘導体が24-35%副生した。 一方、チアゾリジン-4-オン誘導体を1当量のDBU存在下にメタノール中加熱還流すると、メタノールによる開環反応により生じたチア-マイケル付加体からディークマン反応が進行し、四置換チオフェンへ変換されることが明らかとなった。そこで、3-イミノアクリル酸メチルとメルカプト酢酸メチルのチア-マイケル/ディークマン反応をメタノール中で検討した結果、段階的な温度上昇により、目的とする四置換チオフェンがほぼ定量的に得られることを見出した。 また、2当量のトリエチルアミン存在下、3-イミノアクリル酸メチルに対してグリシンメチルエステル塩酸塩やグリシンt-ブチルエステル塩酸塩を反応させると、アザ-マイケル付加反応が進行し、多置換ピロール合成の前駆体となるアザ-マイケル付加体が良好な収率で生成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、研究計画に従い3-イミノアクリル酸メチルとメルカプト酢酸メチルのチア-マイケル/ディークマン反応を中心に検討を進めた結果、触媒量のDBU存在下に反応が進行し、各種官能基を有する新規な四置換チオフェンの合成法を見出すことができた。さらに、反応で副生するチアゾリジン-4-オン誘導体のメタノール中での可逆的開環反応を活用して、四置換チオフェンを高収率で与える条件を明らかにすることができた。しかしながら、令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響のため、研究活動が大きく制限されたことにより、他のヘテロ-マイケル付加反応を起点とする分子変換法の検討は十分進めれていない状況であることから、全体的な進捗はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究成果をもとに、令和3年度はメタノール中でのチア-マイケル/ディークマン反応について触媒反応への展開を検討し、さらに基質適用範囲を明らかにすることで、四置換チオフェン合成法の確立をめざす。また、アザ-マイケル付加体から各種塩基を用いた分子内環化反応による多置換ピロールへの変換を詳細に検討する。あわせて、リン求核剤を用いたホスファ-マイケル付加反応によるビニルホスホン酸エステルの合成と、シラノールのオキサ-マイケル付加反応によるシリルケテンアミナール合成についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響のため、研究活動が大きく制限されたことから、合成用試薬や精製用シリカゲルなどを予定していたほど使用しなかったため研究費の次年度使用が生じた。本研究費については、翌年度分として請求した研究費とあわせて、研究課題の推進のために引き続き次年度に物品費などに使用する予定である。
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