研究課題/領域番号 |
20K06940
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中尾 允泰 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60550001)
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研究分担者 |
佐野 茂樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (20226038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケテンイミン / ホスファ-マイケル付加反応 / ビニルホスホン酸エステル / 3-(ジアルコキシホスホリル)アクリル酸メチル |
研究実績の概要 |
令和3年度は、ケテンイミン誘導体のホスファ-マイケル付加反応により、多置換ビニルホスホン酸エステルの一種である3-(ジアルコキシホスホリル)アクリル酸メチルPAの合成について詳細に検討した。はじめに、チア-マイケル付加反応にて良好な結果を与えたDBUを塩基として用いて、3-イミノアクリル酸メチルとホスホン酸ジメチルのホスファ-マイケル付加反応を検討した結果、目的とする3-(ジアルコキシホスホリル)アクリル酸メチルPAならびにその構造異性体である3-(ジアルコキシホスホリル)プロピオン酸メチルPPが、収率77%、E-PA/Z-PA/PP=34:45:21の混合物として生じた。そこで、種々反応条件を検討した結果、グリニャール試薬である塩化tert-ブチルマグネシウムを塩基として用いて、-78℃にてホスファ-マイケル付加反応を検討した結果、目的とするPAが収率95%、E/Z=2:98で得られた。本反応は、様々な3-イミノアクリル酸メチルやリン求核剤を用いた場合においても良好な収率かつ高いZ選択性で目的のZ-PAを与えた。一方、窒素原子にp-ニトロフェニル基を有する3-イミノアクリル酸メチルを用いて同様のホスファ-マイケル付加反応を行うと、立体選択性が逆転し高いE選択性(E/Z=97:3)でE-PAが生成することが明らかとなった。また、分子内に2つのエステル基を有する3-イミノアクリル酸エステルとジベンジルアミンからアザ-マイケル付加体を良好な収率で合成した。この化合物に対して、塩基としてリチウムヘキサメチルジシラジドを加えると、分子内ラクタム化反応が進行しジヒドロピロール-2-オン誘導体が中程度の収率で得られた。さらに、ジヒドロピロール-2-オン誘導体をシリル化すると、新規三置換ピロールが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、研究計画に従い3-イミノアクリル酸メチルとホスホン酸ジメチルのホスファ-マイケル付加反応を中心に検討した結果、THF中-78℃にて塩化tert-ブチルマグネシウムを塩基として用いる条件において、種々の3-イミノアクリル酸メチルとリン求核剤からいずれも高いZ選択性で3-(ジアルコキシホスホリル)アクリル酸メチルPAを与える反応を開発することができた。また、窒素原子上の置換基によっては、立体選択性が逆転するという興味深い知見を得た。さらに、令和2年度は分子内環化反応が困難であったアザ-マイケル付加体について、基質の反応点を再検討した結果、分子内ラクタム化反応を経由することで三置換ピロールへの変換の可能性を見出すことができた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究成果をもとに、令和4年度はアザ-マイケル付加反応を起点とするピロール合成法について詳細に検討する。すなわち、アザ-マイケル付加体の分子内環化反応の条件を最適化するとともに基質適用範囲を明らかにする。また、環化反応生成物からピロールへの効率的変換反応の条件を確立する。一方、チア-マイケル付加反応を起点とするチオフェン合成法についても、基質一般性を指向して段階的な合成法を再検討する。また、単離可能なオキサ-マイケル付加体の合成を目的に、かさ高いシラノールを用いたオキサ-マイケル付加反応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、おおむね計画通り研究が遂行できたが、新型コロナウイルス感染症の影響による令和2年度の繰越分がそのまま次年度使用に繰り越された結果となった。したがって、本研究費については、翌年度分として請求した研究費とあわせて、研究課題の推進のために引き続き次年度に物品費などに使用する予定である。
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