研究課題/領域番号 |
20K07079
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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研究分担者 |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 講師 (90510123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 硫化水素合成酵素 / 化学療法誘起末梢神経障害 / 抗がん剤抵抗性獲得 / 芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬 / CBS阻害薬 / 多発性骨髄腫 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、生体内で数種の合成酵素により産生される硫化水素(H2S)が、抗がん剤による化学療法誘起末梢神経障害(CIPN)の発症および抗がん剤抵抗性獲得に寄与することを明らかにし、H2S合成酵素阻害薬が新たながん治療薬として、さらに、がん化学療法の副作用であるCIPNの軽減の両面において高い有用性を示す可能性を明らかにすることを目的としている。2020年度は、ヒト多発性骨髄腫(multiple myeloma, MM)由来KMS-11細胞と、MM治療薬ボルテゾミブ(BTZ)の耐性株KMS-11/BTZ細胞いずれの細胞増殖も、H2S合成酵素の1つであるcystathionine-β-synthase(CBS)の阻害薬により顕著に抑制され、この抑制効果はH2S供与体のNa2SあるいはGYY4137により一部回復することから、KMS-11およびKMS-11/BTZ細胞の増殖は主にCBSにより産生された内因性H2Sにより促進的に調節されていることを示した。そこで2021年度は、これまで使用されていたCBS阻害薬の選択性が高くないことを考慮し、新たなCBS阻害薬の創製に向けた実験を試みた。近年、パーキンソン病治療薬である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬(AADC-I)のベンセラジドがCBS阻害活性を有することが示されたことから、ベンセラジドと別のAADC-Iであるカルビドパについて、CBS阻害活性を測定したところ、どちらも強いCBS阻害活性を示し、その効果はカルビドパでより強力であった。さらに、ベンセラジドとカルビドパは、KMS-11細胞およびKMS-11/BTZ細胞の細胞増殖を強力に抑制し、また、これら細胞増殖に関わるNF-κB活性化も有意に阻害したことから、これらAADC-Iが新たなCBS阻害薬の創製のリード化合物となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ感染拡大により、本研究課題遂行に寄与する大学院生の研究活動が制限され、十分なデータを得ることができず、また、学会のキャンセルも相次ぎ、研究結果を発表する機会を得ることができなかったが、2021年度は一部の制限はあったものの、実験およびオンライン開催の学会におけるデータ発表の機会を得ることができた。2022年度は、実験を進め、学会発表を随時行っていくと同時に、論文作成・投稿を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度および2021年度に得られた結果から、H2S合成酵素のうちCBSにより産生されるH2Sが多発性骨髄腫由来KMS-11細胞の細胞増殖を促進的に調節していること、AADC-IのベンセラジドとカルビドパがCBS阻害活性を有し、多発性骨髄腫の増殖を抑制できることが明らかになった。そこで2022年度は、協力研究者の富山大学の豊岡尚樹教授にベンセラジドをリード化合物として様々な新規化合物の合成を依頼し、これら化合物のCBS阻害活性をCBS高発現マウス腎ホモジネートにCBSの基質となるL-cysteineを作用させたときに発生するH2S産生量を指標として検討するとともに、マウス肝ホモジネートのAADC活性を指標にAADC阻害活性の検討も行いCBS阻害活性が高くAADC阻害作用のない化合物の探索を行う。この探索により選ばれた数種の候補化合物につき、多発性骨髄腫由来KMS-11細胞の増殖に対する効果とNF-κB活性化抑制効果を検討し、既存のCBS阻害薬AOAAと比較検討を行う。また、マウスにBTZやpaclitaxel、vincristine、oxaliplatinなど臨床でCIPN発症を誘起することが示されている抗がん剤を投与して作製したCIPNモデルマウスを用いて、CBS阻害活性を有する化合物の効果を検討し、CIPN発症へのCBS/H2S系の関与を検討する。CBS/H2S系の関与が認められたCIPNモデルマウスについて、CBS発現増加の認められる臓器を明らかにするため、摘出した各種臓器(坐骨神経、脊髄、肝臓、腎臓など)のCBSタンパク発現量をWestern blot法および蛍光免疫染色法により検討を行う予定である。得られた結果は、国内の学会で発表するとともに、論文投稿の準備を進めていく。
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