研究課題/領域番号 |
20K07092
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
山村 彩 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40633219)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / Rhoキナーゼ / リモデリング / 肺動脈 / 平滑筋 / 細胞増殖 / カルシウムシグナル / KD025 |
研究実績の概要 |
肺高血圧症は、肺血管障害によって肺血管抵抗が増加し、持続的に肺動脈圧が上昇する致死性の循環器・呼吸器疾患である。肺高血圧症臨床分類の第1群であり、最も典型的な臨床像を示す肺動脈性肺高血圧症(指定難病86)の原因は、肺血管の攣縮(過収縮)とリモデリング(肥厚、線維化)の亢進である。これらの病態形成には、各種シグナル分子の異常や過度で持続的な細胞内カルシウム濃度上昇が関与していることが知られている。これまでに、肺動脈平滑筋細胞に発現し、細胞外カルシウム濃度を感知するカルシウム感受性受容体の発現増加および機能増強が、肺動脈性肺高血圧症の肺血管リモデリングに関与していることを明らかにした。さらに、肺動脈性肺高血圧症で血中濃度が増加する血小板由来成長因子がカルシウム感受性受容体の発現を亢進することを明らかにした。本年度は、様々な血管の攣縮に関与することが知られているRhoキナーゼに着目した。特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来肺動脈平滑筋細胞において、Rhoキナーゼ2が発現亢進していることを見出した。一方、Rhoキナーゼ1の発現変動は認められなかった。特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来肺動脈平滑筋細胞の過剰な増殖は、Rhoキナーゼ2阻害薬であるKD025により濃度依存的に抑制された。その細胞増殖は、Rhoキナーゼ2のsiRNAノックダウンによっても抑制された。さらに、モノクロタリン誘発性肺高血圧症ラットにおいて、KD025は肺高血圧症の病態を改善した。本研究成果は、肺動脈性肺高血圧症の発症や病態形成メカニズムの解明、さらには、肺動脈性肺高血圧症の新規治療薬を開発する上で有益な知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画に沿って、実験をおおむね順調に進めることができた。また、その研究成果を学術論文や学会で精力的に発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、特発性肺動脈性肺高血圧症患者や肺高血圧症モデル動物由来の肺動脈平滑筋細胞において、カルシウム感受性受容体や血小板由来成長因子受容体、Rhoキナーゼ2の発現および機能活性が亢進していることを明らかにしてきた。しかしながら、その発現増加の分子機構については、未解明な点が多い。今後は、カルシウム感受性受容体や血小板由来成長因子受容体、Rhoキナーゼ2の下流シグナル経路を解析し、それらの発現調節機構の解明を進める。また、それらの研究成果を分子基盤として、標的創薬に応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、全ての学会がオンライン開催となったため、旅費が不要になり繰越金が生じた。この繰越金を活用して、本申請課題を発展的に進めるため、次年度は新しいシグナル解析の実験系を立ち上げる予定である。
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