研究課題
免疫チェックポイント阻害剤はがん治療に革新をもたらす画期的ながん免疫療法と考えられている。しかしながらその奏効率は10-30%と不十分であるため、その治療効果を向上させる新たな治療法が望まれている。がんの抗腫瘍免疫応答の抑制因子として、がん細胞の産生するキヌレニンや乳酸が知られていることから、本研究ではキヌレニンや乳酸の蓄積を軽減させる化合物を探索し、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を向上させる複合的がん免疫治療法の基盤開発を目的とする。がん細胞にインターフェロンγを作用させるとキヌレニンを産生するが、このキヌレニン産生を抑制する化合物を微生物産物および化合物ライブラリーより探索した。その結果、弊所化合物ライブラリーに含まれるアミノ酸誘導体Aに、強いキヌレニン産生抑制活性があることが明らかとなった。キヌレニンは、トリプトファンがインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)により酸化されて生合成させることから、IDO1に対する誘導体Aの阻害活性を調べたところ、明確な阻害活性は見出せなかった。しかし細胞内で代謝された代謝物BがIDO1を阻害したことから、代謝物Bの類縁体を合成し、それらの作用機序を現在解析している。乳酸は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によりピルビン酸から生合成される。そこでヒト組み換えLDHに対する阻害剤を、微生物代謝産物および化合物ライブラリーより探索した。微生物の代謝産物よりシュウ酸、化合物ライブラリーから無機水銀に強いLDH阻害活性があることが明らかとなった。またヒト膵がん細胞のLDH発現レベルおよびLDH阻害剤に対する増殖抑制効果を調べたところ、解糖系に依存性が高い細胞株においてLDH阻害剤に高い感受性を示すことが明らかとなった。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
YAKUGAKU ZASSHI
巻: 142 ページ: 145-153
10.1248/yakushi.21-00173-3
Nature Communications
巻: 13 ページ: 4063
10.1038/s41467-022-31690-w
https://www.bikaken.or.jp