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2021 年度 実施状況報告書

TRPM4チャネル変異に起因する遺伝性不整脈の病態形成機序の数理モデル解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K07269
研究機関福岡大学

研究代表者

井上 隆司  福岡大学, 公私立大学の部局等, 研究特任教授 (30232573)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードTRPM4チャネル / 遺伝性心不整脈 / 興奮伝導障害 / 電気生理学 / 数理モデルシミュレーション
研究実績の概要

家族性に同定されたTRPM4チャネル遺伝子変異が関与する不整脈の病態形成機序について、先行する研究課題で開発したイオノマイシン膜穿孔型単一電流測定法(IO法)と数理モデルシミュレーションによる解析を進めた。
前年度から検討中のE7K変異体が伝導障害を起こす機序について、IO法で得たゲーティング解析結果をTrovato2020プルキンエ線維モデルに組み込んで検討した。このチャネルの発現・活性増加が興奮伝導速度を減少させ複雑な伝導ブロックを引き起こすことを、単一心筋細胞活動電位モデル、1Dケーブル興奮伝播モデルによるシミュレーションによって明らかにし、学術論文として公表した(Hu Y et al., Int J Mol Sci 2021; 原著論文2)。
TRPM4チャネルのQ854R変異体についても同様のゲーティング解析及び数理モデルシミュレーションを行い、(1)活性化ゲートが、静止電位や静止Ca2+濃度付近でも非常に開き易くかつ閉じにくくなっていること、その結果、(2)静止電位が浅く活動電位の再分極が後期相で著しく遅延していること、(3)刺激強度の減少や刺激間隔の短縮に敏感に応答して活動電位が容易に欠落・停止する性質を呈することが分かった。また、Cryo電顕の分子立体構造に基づいた検討から、S2/S3膜貫通領域間に存在する結合ポケットへのCa2+のアクセスが、Q854R変異によるS2-S3リンカー部の構造変化によって強く影響を受ける可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究継続中だったE7K変異体について論文として公表できた。また、不整脈性変異体の中でユニークな性質を示すQ854R変異体について、IO法による精密なゲーティングモデルを構築し、興奮の生成や伝導の障害が起こる可能性を明らかにできた。

今後の研究の推進方策

最終年度に当たる2022年度は、残りのTRPM4変異体のゲーティング解析と数理モデル化のみならず、2Dシートモデル、3Dモデルへの組み込みを完成させる。また、コロナパンデミックのために国際共同研究の進捗が著しく遅れている動物モデルの作成も、可能な限り進める。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染拡大に伴う所属機関等からの出張自粛要請により、国内、海外での学会出席や共同研究の打ち合わせに必要な旅費等を使用しなかったため、次年度使用の必要性が生じた。最終年度は、細胞実験や動物実験の消耗品としてだけでなく、海外出張を含めた旅費及び数値シミュレーションに用いるパラレルコンピュータのアップグレードに使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Substantial involvement of TRPM7 inhibition in the therapeutic effect of Ophiocordyceps sinensis on pulmonary hypertension2021

    • 著者名/発表者名
      Hiraishi Keizo、Kurahara Lin Hai、Feng Jianlin、Yamamura Aya、Cui Yuanyuan、Yahiro Eiji、Yokomise Hiroyasu、Go Tetsuhiko、Ishikawa Kaori、Yokota Naoya、Fujiwara Atsushi、Onitsuka Miki、Abe Kohtaro、Ohga Shoji、Satoh Toru、Okada Yasumasa、Yue Lixia、Inoue Ryuji、Hirano Katsuya
    • 雑誌名

      Translational Research

      巻: 233 ページ: 127~143

    • DOI

      10.1016/j.trsl.2021.03.004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Theoretical Investigation of the Mechanism by which A Gain-of-Function Mutation of the TRPM4 Channel Causes Conduction Block2021

    • 著者名/発表者名
      Hu Yaopeng、Li Qin、Shen Yanghua、Fujita Takayuki、Zhu Xin、Inoue Ryuji
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 22 ページ: 8513~8513

    • DOI

      10.3390/ijms22168513

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 実験と数理モデルに基づいたTRPM4チャネル変異体の徐脈性不整脈誘発機構の検討2022

    • 著者名/発表者名
      胡 耀鵬、李 欽、沈 揚華、藤田 孝之、朱 欣、井上 隆司
    • 学会等名
      第99回日本生理学会大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 受容体作動性Caチャネルから始まったTRPチャネル研究2021

    • 著者名/発表者名
      井上隆司
    • 学会等名
      TRPチャネル研究会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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