研究課題/領域番号 |
20K07278
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高柳 友紀 自治医科大学, 医学部, 講師 (10418890)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オキシトシン / 幼少期 / 社会行動 / 遊び |
研究実績の概要 |
社会性の発達には幼少期の社会的遊びが重要であることが知られているが、この神経基盤はほとんど明らかではない。これまでに、ラットの遊び行動時にオキシトシン産生ニューロンが活性化されること、遊びを阻害すると成体で社会的相互作用が阻害されること、幼少期のオキシトシン受容体の活性化が正常な社会行動の発達に必須であることを示してきた。本研究の目的は、「幼少期の社会的遊びによってオキシトシン神経回路が可塑的に機能亢進し、成熟後の社会行動が促進される」という仮説を検証することである。 社会的遊び行動で活性化されるオキシトシン産生ニューロンの投射先を同定するため、遺伝子改変ラットを用いる。オキシトシン受容体発現ニューロンを同定して神経活動を評価し、神経活動を人為的に操作するために、オキシトシン受容体遺伝子座に蛍光タンパク質VenusとDNA組換え酵素Flippaseを発現するラットをCRISPR-Cas9システムで作製した。挿入配列付近のDNAシーケンスを解析し、ラインを選定した。 幼少期の社会的遊びを阻害したラットでは、快情動に伴う50kHz帯域の発声に対する選好が障害された。そこで、幼少期の社会的遊びを阻害したラットに対して、快情動に伴う50kHz帯域の発声を提示し、脳の活動が変化する部位を同定することを計画した。そのため、免疫組織化学法によって神経活動の指標であるc-Fosの発現の検討を開始した。これによって、幼少期の社会的遊びによって可塑的変化の起こる脳部位を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主な計画は、オキシトシン神経回路の同定に必要な遺伝子改変ラットのライン確立と、幼少期の社会的遊び行動によってオキシトシン神経回路が可塑的に機能亢進するかどうかの検証を行う事であった。これらは当初の計画通り概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
オキシトシン受容体-Venus-2A-Flippaseラットを用いて、幼少期の社会的遊びと成熟後の社会行動で活性化されるオキシトシン受容体発現ニューロンを同定する。さらに、オキシトシン-TdTomato-2A-Flippaseラットを用いて、Flippase依存的に膜局在型緑色蛍光タンパク質(GFP)或いはシナプトフィジン-GFPを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを局所に投与し、オキシトシン産生ニューロンの軸索あるいは軸索末端を可視化して、投射先を同定する。 幼少期の社会的遊びを阻害したラットに対して、快情動に伴う50kHz帯域の発声を提示した時の神経活動をc-Fosの発現を指標に解析し、幼少期の社会的遊びによって可塑的変化の起こる脳部位を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は本研究の基礎となる遺伝子改変動物のライン選定や組織学的解析が中心であり、実験動物・消耗品の購入費用が少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、遺伝子組換えラットを多数用いた研究、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた研究を計画している。さらに免疫染色も多く行う必要がある。次年度は、これらの実験のために必要な消耗品費や実験動物購入費・動物飼育管理費として使用することを計画している。
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