研究課題/領域番号 |
20K07331
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
近藤 直幸 関西医科大学, 医学部, 講師 (30570840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インテグリン / 小胞輸送 / LFA-1 / inside-out / outside-in / 超解像イメージング / 全反射顕微鏡 / 一分子計測 |
研究実績の概要 |
本研究課題では, 免疫細胞間の接着を担う接着分子である白血球インテグリンLFA-1を含む小胞の生成・輸送過程に注目し,その制御機構の解明を目指して実験を進めている。本年度は、リンパ球内でLFA-1小胞がどのようなシグナル伝達経路によって細胞接着面に輸送されているかを調べる目的で、全反射顕微鏡を用いた一分子解析と、スピニングディスク型共焦点超解像顕微鏡Dragonflyを用いたイメージング解析を進めた。 これまで、TCR等に対する刺激による”inside-outシグナル”はLFA-1の細胞表面上でのクラスタリングや、細胞内領域に結合する活性化因子群とLFA-1との膜表面での結合や膜輸送を促進し、一端LFA-1が活性化されるとリガンドICAM-1との結合による”outside-inシグナル”により細胞骨格が再配置されて細胞接着が起こると考えられてきた。しかしながら、申請者らの全反射顕微鏡を用いた解析から、inside-outシグナルによるLFA-1の形質膜輸送は限られており、興味深いことに活性型LFA-1を安定化させる試薬の添加によるoutside-inシグナルがLFA-1の形質膜輸送を劇的に上昇させることが明らかになった。また一分子計測実験から、活性化因子群の輸送もinside-outではなくoutside-inシグナルで主に制御されることが分かった (Kondo et al. (2021) Science Signaling 14 eabf2184)。 また、LFA-1細胞内小胞の形成がどのシグナルにより制御されるかを調べる目的で、超解像イメージングに適した蛍光物質で標識可能なSNAPtagとLFA-1の融合タンパク質を発現するリンパ球を作製し、Dragonflyによる解析を行ったところ、LFA-1細胞内小胞はoutside-inシグナルにより顕著に形成されることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
輸送されたLFA-1とその関連因子の細胞表面での動態を調べる新規実験系と、細胞内でのLFA-1を含む小胞の動態を可視化する新規実験系の両方の確立に成功し、また、当初は予想していなかった、LFA-1含有小胞の形成と輸送に関する新しいシグナル伝達制御機構を解明し、その内容の一部を論文として出版することが出来たため(Kondo et al. (2021) Science Signaling 14 eabf2184)。本論文は「Faculty Opinions」の推薦論文にも選出され(In Faculty Opinions, 02 Jul 2021; 10.3410/f.740261063.793586497)、国際的な評価も受けていることも考慮に入れると上記の評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究で見つかったoutside-in シグナル依存的なLFA-1小胞形成・輸送過程が、細胞内輸送に関わるどのような制御因子群により担われているかを、作製した可視化用リンパ球株を親株とした特定の候補遺伝子の欠損株や、既に作製・取得済み、もしくは取得予定である関連遺伝子群ノックアウトマウス等により精査する。また、前年度に確立した質量分析を用いた新規因子の同定手法は、新規因子の候補は得られるもののその数は限られており、またその多くは細胞内に豊富にある翻訳系や細胞骨格系のタンパク質であり、学内で有する質量分析装置では同定感度の限界があるため、学外研究機関との共同研究を念頭においた最新型の高感度質量分析装置の使用を視野に入れて研究を進める。
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