2023年度はEBP50(Ezrin-radixin-moesin-binding phosphoprotein-50)とPARP1の結合証明及び機能解析を、臨床検体及び培養細胞の両面から実施した。 培養細胞を用いた検討では、EBP50ノックダウン系においてPARP1発現は減少しており、EBP50はPARP1タンパク質の発現安定化を担っていることが示唆された。さらに、ELISA法を用いた検討により、EBP50ノックダウン系ではPARP活性が減少しており、シスプラチンに対する感受性が増加していた。これらの結果により、EBP50はPARP1発現及びその活性を通して、DNA修復能に寄与した抗癌剤耐性能に関与していることが示唆された。 臨床検体を用いた免疫染色法により、EBP50高発現系はPARP1高発現を示し、無増悪生存期間及び全生存期間ともに予後不良であることが明らかとなった。 以上の研究成果より、卵巣明細胞癌におけるEBP50細胞質発現は、Akt活性により核内へ移行し、PARP1と結合することによりその発現の安定化と活性化亢進に寄与している。その結果、抗癌剤耐性能と患者予後に影響を及ぼすことが示唆された。
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