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2021 年度 実施状況報告書

大腸がん自然転移モデルを利用した転移関連遺伝子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 20K07440
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

藤下 晃章  愛知県がんセンター(研究所), がん病態生理学分野, 主任研究員 (50511870)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード転移 / 大腸がん / トランスポゾン
研究実績の概要

これまでに4つの大腸がんに関連する遺伝子変異 Ctnnb +/loxEX3; Kras +/LSL-G12D; Trp53 lox/lox; Smad4 lox/loxを組み合わせることで、大腸がんを自然発生し肝臓へ転移するモデルマウス(CKPSマウス)の作出に成功している。一方、このモデルマウスは大腸がんを100%発症するが、肝臓へ転移する個体はそのうち20%程度であった。このことは大腸がんの転移には遺伝子変異に加えさらなる要因が必要であることを示唆している。
本研究ではPiggyBackトランスポゾンを利用した生体レベルでの機能的スクリーニングを実施し、大腸がんの転移に関わる遺伝子やシグナル経路について調査をしている。このトランスポゾンによるスクリーニングは腫瘍細胞でトランスポゼースが活性化し、遺伝子の発現を上昇または抑制する配列がランダムにゲノム上を移動する仕組みである。CKPSマウスとトランスポゾンマウスを交配し、作出されたマウスは大腸がんの発症頻度がおよそ40%に上昇した。このことから、トランスポゾンが挿入された近傍の遺伝子が大腸がん細胞の転移を促進または抑制させる可能性が考えられる。これまでに次世代シークエンスにより得られたトランスポゾン挿入部位の情報から複数の候補遺伝子を同定しており、それぞれの遺伝子と大腸がん細胞の転移との関わりについて解析を実施している。一昨年度には、既に大腸がん細胞の転移を促進させることが報告されているDDR1を見出し、このスクリーニングシステムが機能していることを確認した。昨年度は翻訳と関わりのある遺伝子Xについて解析を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

次世代シークエンスにより得られたトランスポゾン挿入部位の情報から、翻訳に関連する遺伝子Xの発現上昇が転移に寄与することが推測された。大腸がん転移モデルマウス(CKPSマウス)由来の大腸がん細胞株に対し、レンチウィルスベクターにより過剰発現させた細胞を作成した。この遺伝子操作した細胞をマウスの脾臓から移植する肝転移モデルにより、候補遺伝子Xの肝転移巣形成に対する評価を行なったところ、GFPを過剰発現させたコントロール細胞よりも多くの転移巣を形成した。
この翻訳に関わる候補遺伝子Xの詳細な機能を検証するため、siRNAによるノックダウンを実施し、プロテオーム解析を実施することで候補遺伝子Xの発現低下によって変動するタンパクを網羅的に調査した。ノックダウンした細胞ではリボソーム関連タンパク群の低下、つまり候補遺伝子の機能であるタンパクの翻訳/合成が阻害されていることをプロテオーム解析から確認できた。さらにリボソーム関連タンパク以外に、コレステロールに関連するタンパクYの低下がノックダウンした細胞で確認された。このタンパクYと臨床大腸がん患者の相関を調べたところ、このタンパクYの遺伝子発現が高い大腸がん患者では生存期間が短いことが確認された。

今後の研究の推進方策

これまでに同定した候補遺伝子XがタンパクYの発現制御機構とタンパクYの大腸がん転移おける役割について次の検討を行う。CKPSマウス由来の大腸がん細胞に対してCRISPR-Cas9によるノックアウトを実施する。作出したタンパクY ノックアウト細胞をマウスの脾臓から移植し、肝転移巣形成数の測定と組織学的解析を実施する。
タンパクYの発現制御機構については、CKPSマウス由来の大腸がん細胞に対して候補遺伝子XをsiRNAによりノックダウンし、 mRNAの発現を検証するすることで、転写レベルの制御について調査する。
さらにキナーゼアレイを実施し、候補遺伝子Xによって変動する細胞内のシグナル経路を同定し、タンパクYの関係について調査する。
これらの解析結果から遺伝子XとタンパクYの関係が確認されれば、論文作成し投稿する。

次年度使用額が生じた理由

想定していたよりも安い値段で試薬等を入手できたこと、予想よりもスムーズに研究が進んだことから、予定額を使用せずに研究が遂行できた。そのため次年度の研究費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Inhibition of Gli2 suppresses tumorigenicity in glioblastoma stem cells derived from a de novo murine brain cancer model2021

    • 著者名/発表者名
      Tanigawa Seisuke、Fujita Mitsugu、Moyama Chiami、Ando Shota、Ii Hiromi、Kojima Yasushi、Fujishita Teruaki、Aoki Masahiro、Takeuchi Hayato、Yamanaka Takumi、Takahashi Yoshinobu、Hashimoto Naoya、Nakata Susumu
    • 雑誌名

      Cancer Gene Therapy

      巻: 28 ページ: 1339~1352

    • DOI

      10.1038/s41417-020-00282-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Conditional <i>Ror1</i> knockout reveals crucial involvement in lung adenocarcinoma development and identifies novel HIF‐1α regulator2021

    • 著者名/発表者名
      Isomura Hisanori、Taguchi Ayumu、Kajino Taisuke、Asai Naoya、Nakatochi Masahiro、Kato Seiichi、Suzuki Keiko、Yanagisawa Kiyoshi、Suzuki Motoshi、Fujishita Teruaki、Yamaguchi Tomoya、Takahashi Masahide、Takahashi Takashi
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 112 ページ: 1614~1623

    • DOI

      10.1111/cas.14825

    • 査読あり
  • [学会発表] ALCAM (CD166)は大腸がん幹細胞の幹細胞性と転移能に寄与する2021

    • 著者名/発表者名
      青木正博、武藤誠、藤下晃章
    • 学会等名
      がん分子標的治療学会

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公開日: 2022-12-28  

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