研究実績の概要 |
クロストリディオイデス・ディフィシルは抗菌薬関連下痢症・腸炎を引き起こす主要な原因菌であり、医療施設内でアウトブレイクを起こすなど院内感染が世界的に問題となっている上、死亡例も稀ではないため、本菌の引き起こす感染症(CDI)の対策は急務である。CDIの治療法の1つである糞便移植療法は、効果は非常に高いが、現状の施術方法では、ドナーの潜在的な疾患を引き継ぐなど危険性やリスクを伴っている。そこで本研究では、糞便移植療法を安全性の高い方法へ改善するため、ドナーの糞便中から治療の鍵となる因子を同定し、その作用機序を明らかにすることを目的としている。 これまでの予備実験によって、クロストリディオイデス・ディフィシルの増殖を抑制する因子がヒトの糞便中に存在することが分かっており、精製もある程度進めていたことから、本年度は、これまでは使用菌株を一株(RT014)で進めていた点を見直すため、PCR-ribotype(RT:クロストリディオイデス・ディフィシルの型別法の一つで世界的に広く使用されている)の異なる7株を追加で選び、部分精製品ではあるが、本因子がPCR-ribotypeの異なる株(RT018, RT002, RT087, RT369, RT017, RT027, RT078を追加、日本の優勢株および欧米での流行株が中心)でも普遍的に増殖を抑制するかを確認した。その結果、これまでの部分精製品とは異なる標品でも増殖が抑制される菌株が認められたことから、今後どちらが真であるかを見極める必要がある。
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