研究課題/領域番号 |
20K07691
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木下 一郎 北海道大学, 大学病院, 教授 (40343008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 固形がん / SWI/SNF / EZH2 / KDM5 / HDAC / CDK4/6 |
研究実績の概要 |
エピジェネティクスを標的にした新たながん治療が期待されている。SWI/SNFはヒストンH3K27メチル化酵素EZH2とエピジェネティックな拮抗作用を有しており、SWI/SNFの異常がEZH2阻害薬のバイオマーカーとなる可能性がある。本研究では、SWI/SNFが、ヒストンH3K4の脱メチル化酵素KDM5に対しても、エピジェネティックな拮抗作用を有しているとの仮説を立て、より有効なエピジェネティクス標的治療の開発を目指した。 初めに、SWI/SNF異常を有する肺癌細胞株A549、H1299、H460と、SWI/SNF異常を有さないEGFR変異陽性肺癌細胞PC9を用いて、EZH2阻害薬TazometostatとKDM5阻害薬PBITまたはCPI455の併用効果をclonogenic法で検討したが、いずれの細胞株も両薬剤に感受性を示さなかった。次に、PBITまたはCPI455と、他のエピジェネティクスを標的とするHDAC阻害薬SAHAを用いて検討したところ、いずれの細胞もSAHAに感受性を示したが、PBITまたはCPI455との相乗効果を認めなかった。 HDAC阻害薬は、サイクリンE/CDK2ならびにサイクリンD/CDK4/6複合体の活性を阻害するp21の発現を増強することが知られているため、HDAC阻害薬SAHAとCDK4/6阻害薬Palbociclibとの併用効果を、上記細胞を含めた9種類の細胞で検討したところ、5種類の細胞で相乗効果が認められた。なお、Tazometostat、PBITまたはCPI455と、Palbociclibとの間に相乗効果は認められなかった。 以上より、HDAC阻害薬によるエピジェネティクス標的治療が、CDK4/6阻害薬との併用でより治療効果が増強する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検討した細胞株におけるEZH2阻害薬Tazemetostat単剤での細胞障害活性が低く、KDM4阻害薬との併用効果も認められなかったため。一方、種々のエピジェネティクス治療薬と、関係する因子の分子標的治療薬の併用効果を検討し、複数の細胞株で、HDAC阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
Clonogenic法によって、HDAC阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果を認めた5種類の細胞株と、認めなかった4種類細胞株について、ソフトアガロース法によるクローン形成能によって相乗効果が再現されるか検討する。相乗効果のある細胞とない細胞の遺伝子変異や遺伝子発現をCancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)から入手し、相乗効果を予測するバイオマーカーの候補を抽出する。バイオマーカーの候補について、本実験系での再現性を検討し、機序の解明と、臨床検体での検証へ進める。
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