研究課題
エピジェネティクスを標的にした新たながん治療が期待される中、クロマチン再構成を担うSWI/SNF複合体構成因子の異常が、ヒストンH3K27メチル化酵素EZH2に対する阻害薬のバイオマーカーとなる可能性が示された。初年度の研究で、SWI/SNFの状態の異なる種々の細胞株におけるEZH2阻害薬と、ヒストンH3K4脱メチル化酵素KDM5の抗腫瘍効果を検討したが、検討した細胞株におけるEZH2阻害薬Tazemetostat単剤での細胞障害活性が低く、KDM4阻害薬との併用効果も認められなかった。一方、種々のエピジェネティクス治療薬と、関連する因子の分子標的治療薬の併用効果を検討し、複数の細胞株で、Clonogenic法におけるHDAC阻害薬vorinostatとCDK4/6阻害薬palbociclibの相乗効果を見出した。令和3年度は、両薬剤の相乗効果をソフトアガロース法によるクローン形成能によって解析した。Clonogenic法と同様、SWI/SNFの異常のある細胞株を主体とした5種類の細胞株に相乗効果を認め、4種類の細胞株には認めなかった。遺伝子変異やRNA発現データをCancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)から入手し、相乗効果を認めた細胞グループと認めなかった細胞グループでの違いを比較した。相乗効果のある5細胞株の中4細胞株に共通する遺伝子変異を4つ認めたが、全てに共通する遺伝子異常は認めなかった。一方、RNA発現についてVolcano plotで検討したところ、相乗効果の有無により発現比の顕著な遺伝子を複数認めた。このうち、相乗効果のある細胞株全てに高発現している遺伝子も見出された。
2: おおむね順調に進展している
種々のエピジェネティクス治療薬と、関係する因子の分子標的治療薬の併用効果を検討し、5種類の細胞株で、HDAC阻害薬vorinostatとCDK4/6阻害薬palbociclibの相乗効果を確認し、相乗効果のある細胞に共通して高発現するバイオマーカー候補を複数見出した。
HDAC阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果を予測する複数のバイオマーカー候補について、本実験系での再現性を検討する。特に、分泌タンパク質をコードする遺伝子Xについて注目している。さらに、バイオマーカーとしての機序の検討と、臨床検体での検証へ進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Clin Cancer Res
巻: 27 ページ: 5771-5780
10.1158/1078-0432.CCR-21-1560
Sci Rep
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