研究課題
クロマチン再構成を担うSWI/SNF構成因子の異常が、EZH2等のエピジェネティクス関連分子を標的とする治療等のバイオマーカーとなる可能性が示されており、本研究では治療効果を高めるSWI/SNFの状態と併用療法の検討を行った。最終年度は、MTOR経路(TSC1/TSC2またはMTOR)に遺伝子変異がある固形腫瘍に対するMTOR阻害薬everolimusの第II相試験のバイオマーカー解析の結果に着目した(Clin Cancer Res 2021;27:3845-53)。奏効例は30例中2例のみで、その両者にSWI/SNFの主要因子であるSMARCA4の遺伝子変異を認めた。一方、非奏効例28例における同変異は1例のみであった。当院で保有するSMRACA4変異陽性肺がん細胞(H520, H1299)と同変異陰性肺がん細胞(H1975,PC9,H460)のRNA発現データをCCLEから入手し、2つの細胞グループでMTOR経路のGene Set Enrichment解析を行ったところ、SMARC4A変異陽性細胞で、MTOR経路の発現亢進が認められた。Clonogenic法およびSoft agarose法で、everolimusの抗腫瘍効果の検討を行ったところ、H520とH1299ではeverolimus 10nM以下でコロニー形成が抑制されたが、H1975、PC9およびH460では1000nMにおいても抑制されなかった。以上より、SMARCA4遺伝子変異陽性肺がん細胞はMTOR経路に依存し、MTOR阻害療薬が有効であり、エピジェネティクスを標的とする治療との併用薬の候補となる可能性が示唆された。期間全体では、上記知見に加え、HDAC阻害薬vorinostatとCDK4/6阻害薬palbociclibの相乗効果の見られる細胞とそのエフェクター候補を同定した。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Cancer Sci
巻: 114 ページ: 1270-1283
10.1111/cas.15701
Front Oncol
巻: 12 ページ: 988527
10.3389/fonc.2022.988527