研究課題/領域番号 |
20K07896
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 隆文 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70361079)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / αシヌクレイン / 線維 / プリオン伝播 / 受容体 / 膜タンパク / エンドサイトーシス / 網羅的解析 |
研究実績の概要 |
本年度は細胞外に存在する線維化αSYNが結合する神経細胞膜上タンパクの網羅的解析を、MPL-BLOTCHIP-MS法により実施した。まず、C57BL/6Jマウス全脳から作出したMPLを、リガンドである単量体・線維化αSYNを固相化したアフィニティーカラムにアプライし、結合タンパクを選別・溶出した。次いで同サンプルをバイオチップ上に電気転写し、MALDI型質量分析装置を用いαSYN受容体候補分子の1次スクリーニングを実施する。同プロトコールに従ったパイロット実験では、単量体・αSYN両者に結合する3482種類の膜タンパクを得た。このうち絶対peptides値>5、affinity ratio(線維化/単量体αSYN)>1.2の条件を満たす分子が87種類確認された。さらに神経細胞膜上への局在が確認出来る分子をin silico解析ソフトでで絞り込んだ結果、5種類の線維化αSYN受容体候補分子を同定することが出来た。得られた候補分子のcDNAをPCR法により増幅し、真核細胞用発現ベクターに組み込んだ後、常法に従いHEK293細胞に過剰発現しG418によるセレクションの後、安定発現株を作成した。同細胞の培地に単量体・線維化αSYNを曝露し、共免疫沈降法で結合を確認したところ、神経細胞に豊富に発現するtype I membrane glycoproteinの一種である膜タンパクAと線維化αSYNの結合が確認された。分泌シグナルであるIgG kappa light chain leader sequenceとmycタグを付与した膜タンパクAをHEK293細胞に発現させた後に、線維化αSYNを含むconditioned mediumとインキュベーションし共焦点レーザー顕微鏡下に観察したところ、線維化αSYNは膜タンパクAと共にエンドソームへ移行することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた神経細胞膜上に局在するαSYN結合タンパク/受容体の網羅的探索を実施し、候補分子を5つまで絞り込むことが出来た。うち1つの膜タンパクAに関して、共免疫沈降法で線維化αSYNとの結合を確認された。また、免疫染色法にて線維化αSYNとともに細胞内へと取り込まれ、エンドソームに局在することが示された。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目は、手順1で得られた線維化αSYNに結合性を示す膜タンパクAについて、Far western dot blot法などによる2次スクリーニングを実施する。これらにウェット実験にて絞り込まれた受容体候補分子に関して、過剰発現またはサイレンシングにより発現量を変化させ、線維化αSYNの細胞内への取り込み量をウェスタンブロット・免疫組織化学的に定量評価する。ここで優位差が得られた分子は真の線維化αSYN受容体である可能性が高いと判定する。以上の評価に続き、αSYN受容体候補分子に対する特異抗体を用い、選択的かつ効率的にαSYN取込みを抑制が可能となる条件を探索する。以上の評価にはHEK293細胞、SH-SY5Y神経細胞、およびヒト人工多能性幹細胞(iPSCs)由来ドパミン神経細胞を用いる予定である。2-3年度にかけて、線維化αSYN受容体候補タンパク質のノックアウト、あるいは抗体の腹腔内投与などの手法を用いて、マウスモデルでのαSYN脳内伝播抑制効果を観察する。具体的には、マウス線維化αSYNを超音波破砕したpreformed αSYNフィブリル(αSYN PFF)をマウスの一側線条体もしくは嗅球に接種した脳内伝播モデルを用いる。同モデルに、手順2の2次スクリーニングで同定した膜タンパクAを含めた線維化αSYN受容体分子に対する抗体を腹腔内へ前投与する、あるいは同分子のノックアウトマウスを用い、αSYN PFFの脳内伝播抑制効果が得られるか免疫組織化学法およびウェスタンブロット法により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により、学会参加がすべてWEBとなり旅費を使用する機会が無かったため。次年度使用額は翌年度分として請求した助成金とあわせ、物品費、旅費、その他(論文投稿費)に使用する予定である。
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