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2021 年度 実施状況報告書

線維化αシヌクレイン受容体を標的とした新規シヌクレイノパチー治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K07896
研究機関東北大学

研究代表者

長谷川 隆文  東北大学, 医学系研究科, 准教授 (70361079)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードαシヌクレイン / パ-キンソン病 / プリオン様伝播 / sortilin / エンドサイトーシス / エンドソーム / 凝集タンパク / 疾患修飾療法
研究実績の概要

マウス全脳を出発材料にMPL-BLOTCHIP-MS法により同定した6種類の線維化αシヌクレイン受容体候補分子について発現コンストラクトを作製し、HEK293細胞にて安定発現株を作成した。同細胞の培地に単量体・線維化αSYNを曝露し、共免疫沈降法で結合を確認したところ、神経細胞に豊富に発現するSortilin (SORT1)と線維化αシヌクレインが特異的に結合する事を確認した。SortilinはVPS10P 受容体ファミリーに属するI型膜タンパク質で細胞内のエンドソーム小胞と細胞膜に存在し、その内腔側領域となる N 末端には10個の β プロペラ ドメインからなるトンネル構造を形成する VPS10P ドメインを有している。Sortilinの各ドメインを欠失した変異体を作出し線維化αシヌクレインとの会合変化を免疫沈降法で確認したところ、線維化αシヌクレインはsortilinの10ccドメインと結合することが判明した。野生型sortilin過剰発現HEK293細胞ではコントロール細胞と比べ線維化αシヌクレインの細胞内取り込みが促進されたが、100ccドメインを欠損した変異型sortilin発現細胞ではαシヌクレイン取り込みへの影響はみられなかった。さらに、sortilin 10ccドメイン配列を特異的に認識するモノクローナル抗体を作成し、細胞を同抗体でプレインキュベーションすると、線維化αシヌクレインの取り込みが抑制される事が確認出来た。共焦点レーザー顕微鏡を用いたタイムラプス観察では、細胞外の線維化αシヌクレインはsortilinと共にエンドサイトーシス機構で細胞内へと侵入し、初期エンドソームへと輸送されることが観察された。さらに、パーキンソン病剖検脳を用い、sortilinが脳幹型・皮質型Lewy小体のコア部分に存在している事を確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は神経細胞膜上に局在するαSYN結合タンパク/受容体の網羅的探索を実施し6種類の候補分子を得た。この情報を下に、今年度は培養細胞を用いた共免疫沈降法によるバリデーションにて、線維化αシヌクレインとsortilinが特異的に結合し、その結合部位が10ccドメインであることまで突き詰め得る事が出来た。さらに、100ccドメイン欠損sortilinおよび100ccドメイン認識モノクローナル抗体の前処理により、線維化αシヌクレインの細胞内取り込みが抑制される事を示し、細胞外の線維化αシヌクレインのエンドサイトーシスによる取り込みに、sortilinが深く関与していることを証明する事が出来た。さらにヒト剖検脳を用い、sortilinが脳幹型・皮質型Lewy小体のコア部分に存在している事を確認する事が出来た。

今後の研究の推進方策

エンドソームマーカー分子であるsmall Rab GTPase発現細胞を用い、sortilinと結合したαシヌクレインの細胞内輸送の詳細なタイムラプス観察を引き続き実施する。併せて、胞分画法・ショ糖密度長遠心分離法により、細胞外から取り込まれた線維化αシヌクレインのエンドソーム系への集積を定量的に観察する。また、sortilinノックアウトマウス、あるいはsortilin 10ccドメイン抗体を接種したマウスを用い、in vivoでの線維化αシヌクレインの神経細胞への取り込み、伝播現象への影響について検討を行う。これらの研究を通じて、細胞表面の受容体分子を標的とした、これまでに無いαシヌクレイン伝播抑制によるパ-キンソン病/シヌクレイノパチーの疾患修飾療法開発へと繋げたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により国内・海外への学会出張が減り、旅費を使用する機会が無かった。
繰越金は次年度の研究活動に使用する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Deciphering the prion-like behavior of pathogenic protein aggregates in neurodegenerative diseases.2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshida S, Hasegawa T.
    • 雑誌名

      Neurochem Int

      巻: 155 ページ: 105307

    • DOI

      10.1016/j.neuint.2022.105307

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 特集I/Parkinson病および類縁疾患の病態. 5. タンパク伝播メカニズムからみたLewy小体病の多様性.2022

    • 著者名/発表者名
      2.菅野直人、長谷川隆文
    • 雑誌名

      脳神経内科

      巻: - ページ: (印刷中)

  • [雑誌論文] 特集「--“pathy”でせまる中枢神経疾患」α-synucleinopathy: 凝集α-synによる細胞毒性2022

    • 著者名/発表者名
      江面道典、長谷川隆文
    • 雑誌名

      画像診断

      巻: - ページ: 42

  • [雑誌論文] V. Endosome, Lysosome, Exosome: 小胞とは?C. Exosomeの機能-4. プリオン仮説とエクソソーム2022

    • 著者名/発表者名
      4.石山駿、長谷川隆文
    • 雑誌名

      CLINICAL NEUROSCIENCE

      巻: 40 ページ: 859-863

  • [雑誌論文] 動的へテラルキー-脳は階層固定的か? へテラルキーからみた神経疾患: オートファジー2022

    • 著者名/発表者名
      吉田隼、長谷川隆文
    • 雑誌名

      CLINICAL NEUROSCIENCE

      巻: 39 ページ: 859-863

  • [雑誌論文] High prevalence of serum anti-NH2-terminal of α-enolase antibodies in patients with multiple system atrophy and corticobasal syndrome.2021

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi A, Yoneda M, Hasegawa T, Matsunaga A, Ikawa M, Nakamura T, Ezura M, Baba T, Sugeno N, Ishiyama S, Nakamoto Y, Takeda A, Aoki M.
    • 雑誌名

      J Neurol

      巻: 268 ページ: 4291-4295

    • DOI

      10.1007/s00415-021-10553-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulation of the tubulin polymerization-promoting protein by Ca2+/S100 proteins.2021

    • 著者名/発表者名
      Doi S, Fujioka N, Ohtsuka S, Kondo R, Yamamoto M, Denda M, Magari M, Kanayama N, Hatano N, Morishita R, Hasegawa T, Tokumitsu H.
    • 雑誌名

      Cell Calcium

      巻: 96 ページ: 102404

    • DOI

      10.1016/j.ceca.2021.102404

    • 査読あり
  • [学会発表] ランチョンセミナー:COVID-19パンデミックから考えるαシヌクレインの生体機能と病態学.2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川隆文
    • 学会等名
      第62回日本神経病理学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] パーキンソン病治療の進歩:α-synuclein凝集・伝播を標的としたPD疾患修飾療法開発の現況.2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川隆文
    • 学会等名
      第15回パーキンソン病・運動障害疾患コングレス
  • [学会発表] パ-キンソン病修飾療法開発の現況.2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川隆文
    • 学会等名
      第39回日本神経治療学会学術集会
  • [学会発表] 記念講演:「ここまでわかったパーキンソン病ー診療・研究の最前線」2021

    • 著者名/発表者名
      長谷川隆文
    • 学会等名
      2021年度日本フンボルト協会 東北支部総会
    • 招待講演
  • [図書] Annual Review神経20222022

    • 著者名/発表者名
      長谷川隆文
    • 総ページ数
      (印刷中)
    • 出版者
      中外医学社

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公開日: 2022-12-28  

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