研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)の治療研究における問題点は、病態を反映した優れたPDモデルが無く、治療開発から大きく遅れている。我々は変異αシヌクレイン(α syn)fibrilを用い、リン酸化αsyn凝集、神経細胞障害、運動機能低下を認める新規PDモデルマウスを作成し報告した。PDなど神経変性疾患では、炎症性サイ トカインとミクログリアの活性化が神経変性に関与すると考えられている。我々はこの新規PDモデルマウスを使用し、ミクログリアの活性化がαsynの伝播、凝集に関与する分子機構を解明することを目的とする。この分子機構を解明することで、疾患修飾薬などの新規薬剤の臨床応用が推進されることが期待される。 今まで野生型マウス黒質にG51D αsyn fibrilを投与し、ミクログリアの状態、分布等を経時的に病理学的手法で解析を行った。またG51D αsyn fibrilを ASC(apoptosis-associated speck-like protein containing caspase recruitment domain)ノックアウトマウスの黒質に投与した。ASCはNLRP3インフラマソーム と呼ばれる複合体を形成して、プロテアーゼCaspase-1を介した炎症性サイトカインIL-1βやIL-18の成熟と産生を誘導する(Misawa T, et al. Nat Immunol. 2013)。その為、ASCノックアウトマウスではミクログリアの活性化や炎症性サイトカイン産生誘導が抑制される。このG51D αsyn fibril-ASCノックアウ トマウス脳での黒質DA神経細胞死、αsyn凝集体形成、ミクログリアの状態と分布を経時的に病理学的手法で解析を行った。現在、G51D αsyn fibrilを投与したASC ノックアウトマウスと野生型マウスにリポポリサッカライド(LPS)投与することで炎症を誘導し、黒質DA神経細胞死、αsyn凝集体形成、ミクログリアの状態と分布の比較検討を行っている。
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