研究課題/領域番号 |
20K07904
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宮本 亮介 徳島大学, 病院, 特任講師 (90571050)
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研究分担者 |
梶 龍兒 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特命教授 (00214304)
後藤 恵 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (50240916)
森垣 龍馬 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (70710565)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | dystonia / dopamine D1 receptor |
研究実績の概要 |
ジストニアは反復する体のねじれ、姿勢異常を来す神経変性疾患であり、国内に約2万人の患者が存在する。ジストニアの根治療法は存在せず、2015年には遺伝性ジストニアが指定難病となった。対症療法としてボツリヌス毒素注射、抗コリン薬内服、脳深部刺激術などがあるが、これらの治療にもしばしば抵抗性であり、新たな治療法が希求されている。しかし、ジストニアの根本的病態はいまだ不明であり、治療ターゲットとなるべき機能解剖学的部位が同定されていないことが、治療法開発において大きな障壁となっている。線条体は、ストリオソームとマトリックスという機能的に異なる二つのコンパートメントで構成される。我々は、コンパートメント構造に注目し、ジストニア研究を継続してきたが、最近、isolated dystoniaの3家系において、新規原因遺伝子DYS-XXを同定し、さらにDYS-XX変異保有患者の剖検脳において、線条体のstriosomal D1 cellの選択的脱落を確認した。 本研究期間に、DYS-XXの核内移行への影響、半減期の変化、転写活性の変化について検討し、核内移行は保たれること、半減期と転写活性の変化が生じることを確認した。この検討により、同定した遺伝子変異が転写に対して病的な影響を与えることが示された。また、8週齢、20週齢のDYS-XXGFP/wtマウスの脳における、GFPの線条体コンパートメント内での発現パタンと、抗D1R・抗D2R抗体を用いた染色による、ヒト剖検脳と同様のstriosomal D1 cellの選択的脱落の有無について検討したが、有意な変化を認めず、またジストニアphenotypeも確認できなかった。現在、患者で認めたミスセンス変異を CRISPR-Cas9 によりノックインした遺伝子改変マウスを作成中であり、この新しい動物モデルの線条体病理を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DYS-XXの生化学的検討を行い、異常所見を見出した。DYS-XXGFP/wtマウスの脳では異常を検出することができなかったが、患者で認めたミスセンス変異を CRISPR-Cas9 によりノックインした遺伝子改変マウスを作成しその線条体を解析する方針に転換した。
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今後の研究の推進方策 |
患者で認めたミスセンス変異を CRISPR-Cas9 によりノックインした遺伝子改変マウスを作成中であり、この新しい動物モデルの線条体病理を解析する。また、患者由来iPSをmedium spiny neuronにconvertして、その細胞においてDYS-XXとD1Rとの関連を解析する。ジストニアDNAサンプルでの変異スクリーニングを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による影響で、国際共同研究として行っていたDYS-XX遺伝子の機能解析、マウスの解析が遅れた。また、8週齢、20週齢のDYS-XXGFP/wtマウスの脳における、GFPの線条体コンパートメント内での発現パタンと、抗D1R・抗D2R抗体を用いた染色による、ヒト剖検脳と同様のstriosomal D1 cellの選択的脱落の有無について検討したが、有意な変化を認めず、またジストニアphenotypeも確認できなかった。そのため、これらの確認作業を行った後に行う予定であった生化学的実験をキャンセルしたため次年度使用額が生じた。このnegative resultを鑑み、新たに、患者で認めたミスセンス変異を CRISPR-Cas9 によりノックインした遺伝子改変マウスを作成することとした。次年度使用額は、遺伝子改変マウス作成と、患者由来iPSをmedium spiny neuronにconvertさせる実験、患者iPSからのisogenic control cellsの作製、およびこれらの細胞においてDYS-XXとD1Rの関連を検索する実験(生化学的実験とRNA-seq等)、ジストニアDNAサンプルでの変異スクリーニングに使用する予定である。
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