研究課題
本研究はマウス腎臓初代培養細胞をX線と80 keV/umの炭素線でそれぞれ常酸素濃度環境下照射し、照射した細胞をサブカルチャー後、異なる酸素濃度環境(1%、3%、21%)で培養した。40時間後に細胞を回収し、網羅的なmiRNA解析を行った。その結果、低酸素濃度環境で培養した細胞のmiRNAは、Fold Changeが常酸素濃度環境で培養した細胞よりも2倍以上アップレギュレートまたは0.5倍以下ダウンレギュレートされるという、数多くの変動miRNAが見られた。特にmmu-miR-210-3pとmmu-miR-210-5pは放射線種に関係なく、常酸素環境で培養した細胞よりも2-7倍以上変動していることがわかった。さらに、miRNA mimicとinhibitorを用いて細胞にtransfectionし、その後にX線で照射し、コロニー形成法やMTT法を用いて細胞の致死効果を調べた。その結果、常酸素環境で培養した細胞に対して、40 nMのmmu-miR-210-3p mimicとmmu-miR-210-5p mimicをそれぞれtransfectionした細胞は、非transfection細胞よりも多くのコロニー形成があった。一方、低酸素環境で培養した細胞では両者の違いは見られなかった。また、40 nMのmmu-miR-210-3p inhibitorをtransfectionした細胞は、6 GyのX線照射後、3%酸素濃度で培養することで細胞の生存率が非transfection細胞に比べ抑制されることがわかった。つまり、mmu-miR-210-3p inhibitorは低酸素環境での培養により放射線抵抗性が失われることが示唆された。今後は、低酸素環境下でのmmu-miR-210-3pやmmu-miR-210-5pの機能のより詳細を明らかにする予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Biology
巻: 12(12) ページ: 1485
10.3390/biology12121485
Cancer Science
巻: 114(12) ページ: 4548
10.1111/cas.15972