研究課題/領域番号 |
20K08175
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
藤本 嗣人 国立感染症研究所, 感染症危機管理研究センター, 室長 (60446771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エンテロウイルス / 手足口病 / ヘルパンギーナ / 組換え / 病原性 |
研究実績の概要 |
本年度は、新たに49株の塩基配列を決定した(未報告)。コクサッキーウイルスA6群6型(CV-A6)が2011年に、それまでのヘルパンギーナの病原体から非典型的な手足口病(HFMD)の主要な病原体へと変化したことを報告した(EID.2011)。その段階で、CV-A6がCV-A6とコクサッキーA4型(CV-A4)の組換えを起こしていることを見出していた(未報告データ)。CV-A6はHFMD以外にも重症感染症を引き起こしていることが報告されている。CV-A4がCV-A6についての病原性の変化、および流行に組換えや抗原的・遺伝的に近縁であることと関連している可能性が高いことが、本年度の研究で示唆された。 2011年から2019年までCV-A6は1年おきに流行しており、2020年は流行年ではなく2021年にCV-A6流行の可能性が高い。しかし、新型コロナウイルスの流行に伴う手指衛生等の感染対策の徹底により2020年はCV-A6の流行(検出報告)およびHFMD患者数が極めて少なかく、この傾向は2021年も続く可能性がある。そのような状況ではあるが、我々は重症の脳炎症例を1例からCV-A4を検出した。検出されたCV-A4について、さらに詳細に検討することが必要である。 2010年代から、臨床検体から直接にCV-A4やCV-A6を含むエンテロウイルスをPCR(ときにNGS)で検出されるようになった。エンテロウイルスの分離および中和反応(CF反応などの血清学的同定)がなされなくなりつつある。我々はウイルス分離および血清学的な解析も継続する。本年度の研究により、CV-A6とともにCV-A4も研究する必要が明らかになった。次年度以降、さらに研究を発展させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス検査班・班長としてコロナウイルス検査・研究にほとんどの時間をさいたが、時間を見出して結果を出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
コクサッキーA6(CV-A6)について、過去の分離株についてさらに完全長配列を決定する。CV-A4についても同時に研究し、さらにこれら以外の病原体がCV-A6の病態変化に影響を与えた可能性についても研究する。現在、コクサッキーA群2型(CV-A2)による致死症例の論文を執筆中で有り、そちらについてもパブリッシュにこぎつけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの大流行で、アルバイトの雇用が困難であった(新型コロナウイルス対策業務しかできない時期が長かった)、予定していた学会発表などの出張が自粛せざるを得なくなったこと、新型コロナウイルス対策に毎日あたった。これらの理由により予定していた使用額を下回った。2021年度も同様の状態ではあるが、研究費を研究の遂行に使用させていただく。
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