研究課題
私たちは、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対し、ジストロフィン遺伝子のスプライシングを制御するエクソンスキッピング誘導治療の有効性を明らかにした。現在、世界各地で治験が実施され、その一部は日本においても保険収載されている。しかし、特定の遺伝子変異を対象とした治療であるため、より多くのDMD症例を対象とした新たな治療戦略が切望されている。近年、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF受容体、一酸化窒素合成酵素などの血管作動性因子がDMDの病態に大きく関与していることが注目されている。さらに、これらの因子には多くのスプライシングアイソフォームがあり、アイソフォームによりその機能が異なる可能性が報告されている。申請者は、これらの血管作動性因子の選択的スプライシングが病態に関与し、さらに、そのスプライシングを制御することにより病態を改善し得る可能性を着想した。アンチセンス核酸によるスプライシング制御に関する検討では、修飾核酸である2'-O,4'-C-ethylene-bridged nucleic acids (ENAs)が、生体組織への取り込みが他の修飾核酸より優れていた。一方、VEGF-Aは8エクソンより成り、全エクソンを有するVEGF-A206、エクソン6を欠くVEGF-A165など複数のアイソフォームが存在し、アイソフォームにより筋再生に対して促進的あるいは阻害的に作用することが知られている。組織のmRNAにおける、これらのスプライシングアイソフォームの発現様式を解析する系を確立した。これらのアイソフォームの発現と筋組織の病態との関連を明らかにすることにより、DMDの分子病態の解明とともに、新たな治療戦略を確立できる可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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