研究課題
本研究は、ムチンの水分保持力は腸内細菌叢によって左右されると予想し、ムチン水分保持と腸内細菌との関係性を解明することを目的とする。昨年度までに、NSAIDsによる消化管炎症では、腸内微生物の割合を変化させ、腸内環境の悪化を招くが、ムチン産生による保護を見込めるH2RAの補充により、粘膜バリアの強化を伴う腸内フローラの正常化を図ることが可能であると示唆された。また、腸内有機酸の正常化においても一定の回復傾向を示してきた。そこで、本年度は延長最終年度であり、最終的に本現象がムチンと相関があるかを示す必要があった。そこで、糞便ムチンおよびIgA量を測定し、粘膜防御における関連性を検証した。糞便中のムチンの量は、アルカリ条件下でのβ脱離によってムチン構造中のO-グリカンを分解後、同時に糖鎖の還元末端を蛍光標識し、その蛍光強度を測定した。群の平均値は850mg、IDM群は570mg、IDM+H2RA群は957mgであった。また、粘液中の免疫学的防御要素として糞便1gあたりのIgA量を測定した。C群の平均値は1752ng、IDM群は1600ng、IDM+H2RA群は2202ngであった。腸内環境を整えて健康を維持するには、病原体や外来抗原を排除するシステムが機能しなくてはならない。本実験において、IDM群で腸管粘膜傷害を引き起こすと、糞便のムチンとIgA値は減少し、IDM+H2RA群で回復したしたがって、IDM投与によって減少した糞便ムチン量がH2RAを加えることで増加し、粘膜面への微生物の侵入を防ぐ糞便中のIgAの濃度も同様の現象を示した。これより、H2RAは傷害時の粘膜バリア増強に寄与する可能性が示唆された。
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