研究課題/領域番号 |
20K08413
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
瀬口 理 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (60570869)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 拡張相肥大型心筋症 / 先天代謝異常症 / 2次性心筋症 / 筋ジストロフィー / 補助人工心臓 / 心臓移植 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究成果としては2021年4月に開催された国際心肺移植学会にて発表した研究課題について、更なる詳細な考察を加え学術誌である「ESC Heart Failure」論文として発表した(論文題名:Implantation of ventricular assist devices in hypertrophic cardiomyopathy with left ventricular systolic dysfunction)。本論文は最重症の心筋症である拡張相肥大型心筋症に対する補助人工心臓治療の成績を拡張型心筋症に対する同治療の成績と比較検討したものである。 また症例報告ではあるが、世界的にも希少な先天代謝異常症に合併する拡張型心筋症症例に対する人工心臓治療から心臓移植治療に至るまでの治療経過を代謝異常症の病状に関連してまとめた(論文題名:Successful Heart Transplantation in a Patient with Adolescent-onset Dilated Cardiomyopathy Secondary to Propionic Acidemia -a case report)。こちらも「European Heart Journal Case Report」に採択され、現在出版準備中である。 さらには筋ジストロフィーに続発する2次性心筋症に関する研究の一貫として、筋ジストロフィーをテーマとした厚生労働科研のミーティングにおいて「心筋症治療の現状-筋ジストロフィー心筋症治療経験から‐」と題する講演を行った。本講演後には筋ジストロフィー心筋症に対する治療について他分野医師との情報交換も行うことができ、主に神経内科領域医師の筋ジストロフィー医療でのニーズを確認することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示すように肥大型心筋症の最重症病型である拡張相肥大型心筋症に関しての補助人工心臓治療後の経過をまとめた原著論文を発表するに至った。拡張相肥大型心筋症は欧米では近年Hypertrophic cardiomyopathy with left ventricular systolic dysfunctionとして再度注目を集めており、2020年度にはいくつかのReview articleが発表されるなどしている。今回の我々の発表はそういった時代の流れにも合った発表として投稿雑誌の編集委員にも良好に受け入れられ、採択に至った。 また症例報告においても同様であり、先天代謝異常症における成人心筋症症例の報告は世界的にもまれであり、しかも補助人工心臓や心臓移植までを実施し、その詳細をまとめた報告はこれまでに認めていない。本報告では特に人工心臓や心臓移植手術時の患者管理についても詳細に検討しており、その点も編集者には評価されている。 以上より本研究課題の進捗状況に関して総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の主題は希少心筋疾患を基礎疾患とす重症心不全症例の診療指針を確立することであり、昨年度までに成果を得ている筋ジストロフィー、ダノン病、心筋炎に加えて、2021年度は拡張相肥大型心筋症、先天代謝異常症に続発する心筋症に対する研究ならびに症例報告を発表するに至った。 今後の研究の進捗方策についてはこれまでと同様に心臓サルコイドーシスや、不整脈源性右室心筋症、様々な病型の筋ジストロフィーなどを対象とした観察研究や症例報告を行ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的流行のため当初参加予定であった国内外の学会中止があり、学会参加旅費として使用できなくなったため。今後、同次年度使用額は学会参加旅費とともに論文作成費用などに使用する予定である。
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