研究課題/領域番号 |
20K08433
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
磯田 菊生 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (00532475)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症 / 動脈硬化 / 血管傷害 / 新生内膜肥厚 / 時計遺伝子 / サイトカイン / 腎障害 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き時計遺伝子E4BP4欠損マウスと野生型マウスのカフ傷害モデルに対する反応を検討した。当初予想した抗炎症作用をもたらすE4BP4欠損は炎症を悪化させ、新生内膜肥厚増強を起こす仮説とは逆に野生型マウスより内膜肥厚は抑制されることが示された。更に、野生型マウスとE4BP4マウスの傷害血管よりのmRNA抽出を行い、次年度より各種定量的PCRを開始する準備を行った。平行して行った組織の免疫染色では、傷害血管周囲の炎症細胞がE4BP4欠損マウスで野生型マウスより抑制されていることを見出した。 以前より行っている抗炎症性サイトカインであるIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)欠損マウスの研究ではアンジオテンシンII(AngII)負荷による腎臓障害の反応をIL-1Ra欠損マウスと野生型マウスで比較を行った。14日間のAngII負荷で、IL-1Ra欠損マウスは野生型マウスより著明な血圧上昇を認めた(P<0.05)。更にAngII負荷でIL-1Ra欠損マウスの血中IL-6レベルは野生型マウスより5.9倍高値を示し(P<0.001)、腎臓内のpreproendothelin-1 mRNAも有意に上昇していることが分かった(P<0.05)。更に、組織学的検討では、AngII負荷でIL-1Ra欠損マウスは糸球体障害や間質の線維化が野生型マウスより促進していることが分かった。最後にIL-1中和抗体の01BSURをAngII負荷中に投与すると、IL-1Ra欠損マウスと野生型マウスの両方で腎臓の障害が抑制されることが示された。これらの結果はIL-1を抑制するとAngII誘導の高血圧や腎障害を抑制しうること示しており、高血圧患者における腎障害抑制をもたらす新規治療になりうることを示唆している。以上を論文化し、Clinical Scienceに発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性サイトカインであるIL-1がアンジオテンシンII負荷による高血圧や腎障害に大きく関与していることや、IL-1中和抗体によりその腎障害を抑制しうることを実証し、論文を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に施行したカフ傷害を野生型マウスとE4BP4欠損マウスに追加で行い、傷害後3-7日と早期の段階で傷害血管より抽出したmRNAを用いて引き続きRT-PCRを施行し、遺伝子発現変化の確認を行う。更に、Western blotや免疫染色を施行し、血管炎症悪化の機序をタンパクレベルで解明する予定である。 更に、現在繁殖中のE4BP4/ApoEダブル欠損マウスとApoE欠損マウスのカフ傷害実験を進め、新生内膜肥厚が同様に抑制されるかを検討する。 動脈硬化実験については、2021年度までに採取したE4BP4・ApoEダブル欠損マウスとApoE欠損マウスの動脈硬化病変を脂肪染色や線維染色、さらに炎症細胞やサイトカインの免疫染色を行いE4BP4欠損による動脈硬化病変構成成分の変化を定量評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染蔓延による非常事態宣言発令に伴い、実験およびマウス繁殖の1時停止を余儀なくせざるを得なかったため、遺伝子発現変化や免疫染色による機序解明が次年度に繰り越された。 使用用途は、カフ傷害を野生型マウスとE4BP4欠損マウスに追加で行い、傷害後3-7日と早期の段階で傷害血管より抽出したmRNAをマイクロアレーで解析し、E4BP4欠損がもたらす傷害抑制に特異的な遺伝子の同定を行う。既知の遺伝子であれば、RT-PCRを施行し、遺伝子発現変化の確認を行う。更に、Western blotや免疫染色を施行し、血管炎症悪化の機序をタンパクレベルで解明する予定である。動脈硬化実験については、2021年度までに採取したE4BP4・ApoEダブル欠損マウスとApoE欠損マウスの動脈硬化病変を脂肪染色や線維染色、さらに炎症細胞やサイトカインの免疫染色を行いE4BP4欠損による動脈硬化病変構成成分の変化を定量評価する予定である。
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